第一幕その九
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第一幕その九
「気にするな。礼拝の準備をしろ。今日は戦に勝った事を祝わねばならない」
市民達はまだ怯えながらも動き始めた。堂守もその中に入ろうとしたがスカルピアに見つかってしまった。
「おい、そこの堂守」
「はい」
恐る恐るスカルピアの方を振り向いた。
「聞きたい事が有る。こっちへ来い」
「はい」
蛇に睨まれた蛙の様に竦みながらも来た。
「ここに囚人が一人逃げ込んだとの情報が入った。名はチェーザレ=アンジェロッティ。その男の家の礼拝堂がここにあったな。そこに用が有る。何処だ」
震える手で礼拝堂を指差す。
「スキャルローネ」
「はい」
名を呼ばれた赤髪の人相の悪い大男が二人の警官を引き連れ出て来た。
「礼拝堂をさがせ」
「はい」
スカルピアの指示に従い礼拝堂の中を調べる。すぐに一つの扇を持って来た。
「扇か」
扇を手に取り調べ始める。要に彫られた紋章が目に入った。
「アッタヴァンティ家の紋章か。どうやら奴の妹が手引きしたのは間違いないな。もう逃げた後か」
扇をスキャルローネに返した。
「大砲を使ったのは失敗だった。獲物に逃げられてしまった。・・・・・・・・・ん!?」
ゼッナリーノが後片付けをしている絵が目に入った。
「本人がこんな所にいるとはな。マグダラのマリアの様だがまだ未完成みたいだな。描いているのは誰だ」
「マリオ=カヴァラドゥッシ子爵です」
「あのフランスかぶれか。中々尻尾を出さないが格好や経歴を見ただけでも怪しい奴だ」
堂守の答えに忌々しげに顔をしかめる。
スカルピア達が教会中を調べ回っている最中にゼッナリーノは後片付けを終え遠くに置かれたままにしてあった籠を持ってスカルピアの前を横切ろうとする。
「待て」
呼び止められた。思わず身体が硬直する。
「御前が手に持っている籠は何だ」
「閣下のおやつを入れた籠ですが」
「見せてみろ」
ガタガタと震える両手で籠を差し出した。
奪い取り中を改める。何も無い。
「随分と大きい籠だな。子爵はいつもこれだけ召し上がられるのか?」
「いえ、今日はお腹が空いてないと仰っていました」
ブルブルと顔を横に振り否定する。
「そうか、良く解かった。堂守、もう一つ聞きたい事がある」
「はい」
完全にすくんで動けない。
「子爵の他に誰か来たか」
「子爵のお兄様です」
「伯爵殿か。他には?」
「他は・・・・・・・・・」
絵に捧げてある花束に気付いた。
「花束が捧げられてますね。トスカ様が来られたみたいです」
「トスカ、フローリア=トスカか」
スカルピアの眼に邪な光が宿った。
「神と王家には忠実な女だがあの男の恋人だったな。目をつけておくか」
意味ありげである。そのと寺院の正門から紅衣に身を
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