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東方守勢録
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少年が絶命してから約30秒後


爆風で開いた壁から、ゆったりと風が流れ込んでいた。ピクリとも動かない少年の髪を揺らし、ゆっくりと包み込んでいく。

そんな時だった。


「よっと! う〜んとここであってたかな?」


ぽっかりと空いた壁から突如鎌を持った少女が現れた。髪の毛は赤色で、両端で軽く結んでいる。年は二十代だろうか。

少女は辺りを見渡すと、何かを見つけたのか小さく「いた」と呟く。その瞬間、1秒もかかることなくある場所に飛んでいた。


「いたいた。こいつが映姫さまの言ってた重要人物ってやつかい? とてもそうは見えないけどねぇ」


少女はそういいながら溜息をつくと、足元にいた少年を担ぎあげる。


「さて、帰るとしますかな」

「死神が死体を持ちかえるのか? 珍しいじゃないか」

「?」


再び飛ぼうとした少女を引き留めたのは、壁にもたれかかる男だった。


「あら、あんたまだ生きてたんだ」

「生憎、そいつより傷が浅いんでね」

「そうかい。まあでも……すぐに迎えが来るだろうさ」

「あはは、怖いねぇ」


男は腹部を抑えながら笑う。少女はそれを見ながら不思議そうにしていた。


「さあ、早く行きなよ?」

「言われなくてもそうするさ。しかし……映姫様はなぜ……こいつの死体を持ってこいなどと……」


少女は少し不思議そうにしながらも、「まあいいか」と言いその場から居なくなった。

再び、部屋の中を静寂が埋め尽くす。


「ははっ……これで僕の頑張りも無駄になるってことか。ほんと……運がいいんだな、あいつは」


男は少女がいた場所を見ながらそう呟いていた。


「なら……僕があと出来ることは、絶望を与えるだけか」


男はそう言って何かを解除するようなしぐさをする。

その数分後……



「俊司さん!!」


少年の名を呼びながら、白髪の少女が中に入ってきていた。













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