暁 〜小説投稿サイト〜
東方守勢録
最終話
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
戻した。


「まだあなたにはやることがあるわ……まだ……」

「……」


幽々子の言葉を聞いた妖夢は、何も言うことなく無表情のまま涙を流していた。


「妖夢さん……」

「行きましょう……紫」

「……ええ」


紫は複雑な顔をしたままスキマを展開させる。一同はそのまま、スキマをくぐって行くのであった……。

























数日後


永遠亭では次の戦闘に向けて休養を取っていた。

捕虜は人数が多すぎた関係で、守矢神社で預かってもらうことになった。永遠亭にはいつものメンバーが残っていたが、活気があふれいているわけではなかった。

俊司の死は全員に告げられた。ある物は泣き、ある者は怒りをあらわにし、それぞれが心に深いダメージを負っていた。

この戦況を打破するキーマンとなり、皆にとって大切な仲間となった彼を失ったのは、紫達にとっては大打撃だった。

特に好意を抱いていた妖夢に至っては、回復の兆しが見えていなかった。

いつも朝目覚めては俊司と特訓を行った場所に行き、ただ一点を見続ける。食事もほとんど口にすることなく、体も徐々に衰退しているようだった。

なんとか元気づけようとする紫達だったが、その行為もむなしく妖夢は立ち直ることができなかった。


「……」


この日も妖夢はただふらふらと歩いていた。彼と過ごした思い出だけを頼りに。

誰が声をかけようとも返事をしようとはしなかった。まるで生きた屍のように、何の目的もなく歩き続けるだけだった。


「……あ」


ふと気がつくと、少女はある部屋の前に止まっていた。今はもういないはずの……少年の部屋だった。


「俊司さん……」


妖夢は何かを求めるように扉をあける。


「妖夢」

「!?」


一瞬聞こえてきた声が、妖夢の鼓動を上げる。だが、それもすぐに収まって行った。


「俊司……さん?」


部屋の中には誰もいない。もちろん声も幻聴でしかなかった。

妖夢はゆっくりと中に入ると、音を立てずに扉を閉めた。


「……俊司さん……私は……!」


ふと気がつけば、無意識に刀を握っていた。

とがりきった刃物は光を反射させながら少女の目に映る。それを見ながら、妖夢はある思いにかられていた。


(いっそ……会いにいけばいいんだ)


そのまま何も考えることなく、妖夢は刀を首筋にあてる。このまま引いてしまえば、自分も俊司のもとに行ける。そんなことを考え始めていた。


「俊司さん……今……?」


ふと目線をそらした時、妖夢の目に俊司の鞄がう
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ