第一幕その八
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ぎ声が聞こえてきた。
「あれは!?」
皆踊りを中断した。ガヴォットも止み皆その声に耳を向けた。それは人々の声であった。
「昼も夜もない、いつも俺達は飢えて苦しんでいる」
何か呪詛するような声が聞こえてきた。
「ここにも波が押し寄せてきたか」
シェニエはそれを聞いて呟いた。
「お偉い方々が酒と御馳走に囲まれている時に俺達は冷たくて固い一欠けらのパンをかじっている。そして明日は水しかないという毎日さ」
それはあきらかに貴族達を呪詛する声であった。声は次第に近付いて来る。
「これは一体何事ですか!?」
伯爵夫人は血相を変えてやってきた家令に対して問うた。
「はあ、実は・・・・・・」
家令は真っ青になっている。その言葉もしどろもどろだ。
そうこうしている間に声はすぐ側までやって来た。扉を開き中に入った。
それは民衆達であった。彼等はみすぼらしい服を身に纏い貴族達を恨めしい目で見ている。
その先頭にはジェラールがいた。彼は憎悪に満ちた目で貴族達を見据えている。
「ジェラール、これはどういうことですか!?」
伯爵夫人は彼を睨みつけて問うた。
「彼等の姿を御覧下さい」
ジェラールは主人に対して言った。強い声で。
「私は彼等の声を聞いたのです。真の人々の声を」
「確かに」
シェニエはそれを聞いて呟いた。
「今まで貴女に与えられた服も、パンも忌まわしいものだった。私は奴隷ではない」
「私が貴女を何時奴隷だと言いました!?」
彼女には身に覚えのないものだった。怒りで顔を青くして問うた。
「その鈍い心ではおわかりになりますまい、永遠に」
ジェラールはそれに対し言い切った。そこに使用人達がやって来た。
「同志達よ、君達もこのままでよいのか」
だが彼は自らを追い出そうとした同僚達に対して逆に問うた。
「え・・・・・・」
彼等はそれを聞き思わず立ち止まった。
「君達は奴隷のままでいいのか、人間なら自らの足で立ち自らの手でものを掴みたくはないのか!?」
「それはどういう意味だ!?」
だが彼等にはジェラールの言っていることがわからなかった。ジェラールはそれに失望するかに思えたが違った。
「いずれ君達にもわかる」
「かなり一途な男だな」
シェニエはそれを見て再び呟いた。
「だが少し視野が狭いな。それが危険だ」
しかしその言葉はジェラールの耳には入らない。そこへ一人の老人がやって来た。
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