第三話、ヘルメス・アークライド
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俺がプレシア達の家に居候することになって早くも一年が経とうとしていた。その間、特に変わったことはあの一件以来起きておらず、俺達は比較的平和に暮らしていた。
碧天の魔術書の捜索は続いているが、未だ手掛かりはなく、アリシアの浄化は先延ばしの状態になってしまっている。だが、定期的に俺の魔力を流し込んで検診しているが、侵食が進んだ等の症状は見られなかったため、焦らず、じっくりと作戦を考えているところだ。
そして、先ほどの変わった一件というのは、テスタロッサ家に俺以外の新たな居候が増えたことだ。
オレンジ色の体毛に、獰猛な瞳。額に宝石の埋め込まれた『アルフ』という狼で、フェイトの使い魔だ。家の近くの山奥で倒れていところをフェイトが保護して、命を助けるために主従契約を結んだのだ。
以来、アルフも新たなテスタロッサ家の一員となっている…のだが、なぜかテスタロッサ家の主婦ポジションに設置されている俺としては、食事などの世話で苦労が増えていた。
「はぁ……」
「どうしたのですか?溜息などついて」
「ん?ああ、いや。なんでもないよリニス」
溜息をついた俺を不思議そうに見つめるリニスになんでもないと答え、俺は自分の正面に立つ少女を見据えた。
風にたなびく金色の髪、強い意志を湛えた紅い瞳。
フェイト・テスタロッサが、俺に向けて自らのデバイス、『バルディッシュ』を構えていた。
太陽光を反射して鈍く光る漆黒の鎌に目を細めながら、俺は自身の左手薬指に嵌っている指輪に触れた。
「ウンディーネ、セットアップ」
『stand by ready set up』
女性の声が聞こえたと同時に、俺は虹色の魔力の奔流に飲み込まれた。
そして、自分の武装が変わっていくのを感じる。黒のアンダーアーマーに、白のシャツ、そして紺の丈の長いフードつきのパーカー。ジーンズだった下は、少し大きめの青いズボンに、脛の辺りまであるブーツになった。
そして、目の前に現れた黒鞘の刀を手に取る。中腹で大きく反ったこの刀こそ、俺のデバイス、ウンディーネの本当の姿だ。
『どこか調子の悪い箇所はありますか?』
「いや、ないよ。完璧だ」
ウンディーネに答えを返しつつ、黒鞘を右腰に差す。
さて、これで準備万端だ。
「双方、用意はいいですか?」
俺とフェイトの間に立ったリニスに、俺は頷きを返し、フェイトを見据えた。
「では……始め!」
「ハアッ!」
「フッ!」
漆黒の鎌と黒漆の鞘がぶつかり、衝突音と共に大量の火花が散った。
事の発端はプレシアの一言だった。
『本気のラウルとフェイト、どっちが強いのかしら?』
これにリニスが便乗して、フェイト
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