第一幕その六
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シェニエは軽く受け流すように言った。
「それは一理ありますな」
ここでフィオリネルリが入ってきた。
「あまりにも力をお与えになるミューズはあまり有り難くありません」
「よくわかっておられますね」
シェニエはそれを聞いて答えた。
「けれど残念ですわ」
マッダレーナはそれを聞き口を少し尖らせた。
「折角素晴らしい詩が聞けると思いましたのに」
彼女は芸術へは関心が高かった。だからこそフレヴィルの歌にも素直に感動したのだ。
「では私今から貴方と勝負致します」
「私とですか?」
シェニエはそれを聞いて眉を少し上に上げた。
「はい。貴方に詩を謳ってもらいます」
「おお、それは面白い勝負ですね」
フィオリネルリはそれを聞いて声をあげた。
「そう思われるでしょう?ならば」
フィオリネルリに対して顔を向けて微笑んだあとシェニエに顔を戻した。
「勝負を申し込みますわ」
「おやおや」
それを聞いた伯爵夫人と他の客達は少し呆れたような声を出した。
「ならば私は」
フィオリネルリは伯爵夫人に何かを言った。
「わかりましたわ」
彼女はそれを聞くと優雅に微笑んで側の者に対して何かを告げた。
その者は頷くと何処かへ消えた。そして暫くして楽器を持って来た。バイオリンだ。
「どうぞ」
「有り難うございます」
フィオリネルリは笑顔で礼を言うとその楽器を手にとった。そして構えた。
「それでは私は」
それを見たフレヴィルも動いた。
「その勝負の立会人となりましょうか」
そう言って二人の中間に立った。
「同じ芸術を愛する者として」
「では貴方へ突きつける一撃目は」
マッダレーナは芝居がかった言葉をシェニエに向けた。
「田園ものをお聞きしたいですわね」
当時のフランス貴族の間で流行った詩のジャンルの一つである。その田園風の別荘と共にロココを代表するジャンルであった。
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