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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第四十九話  決戦(その八)
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訊いても“何がです?”って訊き返してきた。でもニコニコしてたからワザとだと思う。頭領ってちょっと意地悪な所が有るよ。

頭領は今、ビッテンフェルト提督と一緒に反乱軍のヤン提督と話をしている。本当はヤン提督と二人だけで会いたかったらしいけど、それだと変に誤解する人がいるからね、本当はメルカッツ参謀長が立ち会うはずなんだけど参謀長は仕事が忙しいからビッテンフェルト提督に頼んだみたいだ。

頭領の方からヤン提督に話をしたいと申し込んだみたいだけどどんな話をしているのか、凄い気になる。後で訊いてみよう、教えてもらえれば嬉しいけど……。ヤン提督を見たけど高名な軍人には見えなかった。穏やかな感じでちょっと頭領に似ていた、話が弾めばいいな……。



帝国暦 490年   5月  9日   ガンダルヴァ星系   ウルヴァシー   フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト



「如何ですか、その紅茶は。帝国産の物ですが……」
「美味しいと思います」
「そうですか、それは良かった」
黒姫の頭領とヤン・ウェンリーが話している。ヤン・ウェンリーはどうやら紅茶が好きらしい。黒姫の頭領はその事を知っていて紅茶を用意したようだ。

ヤン・ウェンリーがティーカップを顔に近づけた。眼を閉じている。香りを嗅いでいるのか。それを見て頭領が微かに苦笑を浮かべた。
「申し訳ない事をしました。香りを十分に楽しめませんね」
「いえ、そんな事は」
「遠慮なさらなくても結構ですよ」

なるほど、頭領がココアを、俺がコーヒーを飲んでいる。そのためどうしても紅茶の香りが消されてしまうのだろう。頭領がクスクスと笑っている。ヤン・ウェンリーは困惑の表情だ。妙なものだ、この二人はほんの少し前までは殺し合いをしていたはずだがそうは思えないほど穏やかな空気が流れている。

外見のせいかもしれない、黒姫の頭領は華奢で穏やかな青年にしか見えないしヤン・ウェンリーは軍人と言うより芽の出ない若手の学者の様な容貌と雰囲気を醸し出している。二人とも高名な海賊と軍人には見えない……。俺を含めて三人、正三角形が出来るような位置に座っているが俺だけが場違いのように思える。

「頭領、私に話が有るとのことですが……」
「話では無くお願いが有るのです」
「……お願いですか」
「ええ」

二人がじっと見詰め合っている。俺もコーヒーカップをテーブルに置いた。気付かれないようにそっと息を吐く。ここから先は間違いは許されない。頭領とヤン・ウェンリーの会談、帝国軍の中には二人の接触、接近を危険視する人間も居るはずだ。

当初頭領は二人だけの会談を望んだが皆が反対した。いや、会談その物も出来る事ならすべきではないと忠告した。しかし頭領はそれでも会談を望んだ。已むを得ず立会人を入れる事での会
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