暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第四十九話  決戦(その八)
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
時間で眼前の敵から撤退するのは不可能だ。敗北が確定した、いやローエングラム公が居ない以上、同盟の敗北は既に決まっていた。それに気付かなかっただけだ。一体何のために戦っていたのか……。

『話を戻しましょう、ヤン提督のイゼルローン要塞攻略戦はどうです?』
視線を感じる。ヒューベリオンの艦橋に居る皆が私を見ていた。
『ローゼンリッターに帝国軍人の姿をさせ要塞内に送り込んだ。要塞司令官を押さえる事でイゼルローン要塞を攻略した、立派な騙し討ちですよ。それを奇跡、魔術と言って褒め称えたのは貴方達です。この作戦は私が立案しました。ヤン提督を称賛した貴方達に私を非難する資格が有りますか?』
声が無い。その通りだ、あれは騙し討ち以外の何物でも無い。

『これは戦争なんです、騙す方が悪いんじゃありません、騙される方が悪いんです。海賊でも分かる理屈ですよ、自分を欺くのは止めて頂きたいですね。敗北を直視できない軍人ほど始末の悪いものはありません』
これもその通りだ、騙す方が悪いのではない、騙される方が悪いのだ。オペレータがメモを寄越した。通信をしている艦が判明したようだ。だがローエングラム公が居ない以上、何の意味もない。しかし、ローエングラム公は一体何処に行った?

『この戦いで同盟軍はローエングラム公を戦場で殺そうとした。理由は公を殺せば帝国は指導者を失う、ローエングラム体制は崩壊すると見たからです。一時的に同盟が帝国に占領されても再興は可能だと見た。ゲリラ戦はローエングラム公を戦場に引き摺り出す挑発だった』
また呻き声が起きた。こちらの作戦は完全に読まれていた……。

『だからそれを利用させてもらいました。私がローエングラム公の身代わりとなる事で貴方達の作戦目的そのものを叩き潰したんです。貴方達がこの戦場に現れた時点で自由惑星同盟の敗北が決まりました。同盟軍が勝利する可能性は一パーセントも無い』
一パーセントも無い、その言葉が胸に刺さった。無益に人を死なせてしまった。

『後は貴方達を逃がすことなく降伏させる事だけです。それも目途が立ちました。これ以上無益な死傷者を出す必要は無いでしょう、降伏を勧告します』
『……』
司令長官は俯いている。

『先程到着した二個艦隊の司令官はビッテンフェルト提督とファーレンハイト提督です。どちらも破壊力が強く短期決戦が得意な猛将ですよ。第一艦隊、第十三艦隊の後方を叩かせれば瞬時に勝敗は付く……』
誰かが溜息を吐く音が聞こえた。瞬時に勝敗は付く、いやもう付いている。一時間では艦隊は逃げ出せない。目の前の艦隊が逃がしてはくれない……。そしてこれから先、帝国軍の艦隊は増える一方だ。

『……一つ教えて欲しい。ローエングラム公は今何処に?』
ビュコック司令長官が沈痛な表情で問い掛けた。そう、私も知りたい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ