2 「竜鱗病」
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くと見上げる弟子たちを見下ろし、ふっと苦笑したナギはぽんぽんと赤金と藍の髪を撫でた。
「全ては、話を終えたあとにね」
広場をつっきって入口へゆく。途中ルイーズが肩に飛び乗り、特等席でゴロゴロと喉を鳴らしながら、いかに自分が素晴らしくナギを自慢してきたかを説明した。はいはいと適当に相槌を打ちながら、道すがら村人に朗らかに挨拶されたことが嬉しい。
「よっす! カームゲイル! オイラは午前中ゲロゲロ吐きまくってすっかり二日酔いが治ったぜ!」
「そいつは……良かったのか?」
「なんで疑問形なんだよ! 素直に褒めやがれ! ノリ悪ぃなこのやろうっ」
午前中ずっと嘔吐していたというのは、想像するだけでこちらの気分も悪くなってくるのだが、それは褒めるに値することなのだろうか? それともそれを乗り越えたことを褒めろということか。それならすごいなとも思う。
最初に会った時のギスギス感はどこへ行ったのか、村を助けたナギの株は自称“ユクモの鬼門番”ロウェル・クロッツェンの中ではどうやら上がったらしく、機嫌よくバシバシと背中を叩かれた。
というか、多分以前会ったときに起きたことを全て忘れていそうだ。こいつなら。
エリザに道端の虫の死骸を見るような目で見られたことも全て忘れているに違いない。こいつなら。
なんとなくの雑談を交わし、それじゃあと手を振ったまま慣れた指笛を吹く。
ヒュゥィイイ!!
指笛は天高く響き、それは村の人々の注目を浴びるのには充分すぎた。
ナギが渓流にいないときは近場の山のどこか、できるだけ主のそばにいるデュラクは、数分もせずに急降下してきた。
風圧にロウェルが吹っ飛ばされるが、慣れたナギは一歩足を後ろに下げるだけで顔に笑みを浮かべた。
「デュラク」
ピィ!
村人や観光客の好奇と尊敬や感嘆の視線を背中に受け、ひらりと慣れた調子で艶やかな黒毛に飛び乗る。
ふわりと浮き上がったデュラクは、村の上を一回旋回してから渓流へと速度を上げていった。
耳元を通り過ぎる豪風の音は久しぶりに聞く音だった。
「なあ、デュラク」
ピィ?
「俺がユクモ村に住むって言ったら、お前はどうする?」
前代未聞の村となるだろう。
飛竜の加護を受けた村となるのだから。
ピィ…ピュィエア!
――ついていくよ。
なんとなく伝わるナギとデュラクのいつもの会話。
「そうか……ありがとな」
ピィ〜♪
――もちろん♪
となれば、あとは妹を助けるのに全力を尽くすまでだ。
決意の拳を握り締め、ナギは虚空をにらみつけた。
(それともうひとつ。耳に入れたい話がある)
凪が立ち上がったとき菖蒲が耳打ちした言葉が、耳奥に木霊する。
(嘘か誠
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