2 「竜鱗病」
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もある。大丈夫なのか?」
「余裕だ。脳味噌掻っ捌いてやる」
「そ、そうか……」
普段より更に短いナギの返答は、彼が内心の動揺を押し殺していることを如実に表していた。その証拠に、行き場のない――強いて言うならば運命にとでもいおうか――怒りが、ナギの周りから殺伐としたオーラとなって溢れていた。
「大陸規定のレア度最高値7を誇る火竜の延髄を、余裕なんて……流石ですっ! 兄さん!!」
そんなオーラをものともせず青い目を輝かせた双子の弟こと岬は、尊敬の眼差しで年の離れた長兄をみつめた。汀は菖蒲の言葉にぶーぶーと文句を言っていた。
「で? 必要なものは?」
「ああ、これだ」
懐から出した紙に書かれていたのは、全部で 9種類の材料。
ケルビの角、いにしえの龍骨、アルビノエキス、女王虫の尻尾、火竜の延髄、モスの苔皮、龍殺しの実、雪山草、深血石。
「新大陸にはないものまであるのか」
「その点は抜かりない。お前にはいにしえの龍骨と火竜の延髄、それから深血石を頼みたい。流石に1人じゃアレだし、みーと岬もついていきたいだろうから、一緒に行ってやってくれ」
「ひとりでも問題ないが……」
「みー行きたい!」
「僕も行きたいです!」
「……そういうわけだ。みーの暴走は大抵岬が止めるが、まあよろしく頼む。お嬢ちゃんたちには、雪路を頼みたい」
「分かりました!」
「了解。ユクモ温泉たまごでもたらふく食べさせてあげるわよ。栄養価高いし。もちろんお代はそっちもちだけど」
ふたたび雰囲気が明るくもどった応接室。すぐにでも向かおうと準備をするため双子は階上へ駆け上ってゆき、ナギはとりあえず一旦我が家に帰って用意を整えることとした。既に多数の村人にデュラクの存在は知れ渡っているため、今更隠そうとしてももう遅い。
「往復で2時間弱かかるって、岬達に伝えてくれる?」
「分かりました。」
「結構遠いよね。不便だ」
青空を見上げると、思わず次いで言葉が出た。
「……ここに引っ越そうかな…」
「え? ほんとですか!?」
一番の気がかりだったナルガクルガを、予想外に村人が容易に受け入れてくれたことに対して戸惑いは拭えないが、もちろんそれは歓迎すべきことである。となれば、ナギがあの人の住みにくい地にわざわざ根を下ろす必要性はないわけで。
自分を受け入れてくれた彼らのもとに身を寄せたいと思うのは、長年1人暮らしを続けてきた22の青年にとって当たり前のことであった。
「人肌恋しくなっちゃった? 家なら多分すぐ建てられるわよ。村長は是非あんたにここにいてもらいたいだろうしね」
(すべてを話して、それでもこの関係が崩れなかったら……)
俺はここに居を構えようか。
両側から腕を掴んでわくわ
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