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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
2 「竜鱗病」
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るっつうこと。それも痛みはどんどん激しくなるのに、病の進行はだんだん遅くなっていくというタチの悪ぃ病だ……」
「それって、つまり……」
「痛みが激しくなればなるほど病の進行は遅れ、特効薬もないままに苦しみ抜いて死んでいくのさ。リーゼちゃん」

 怯えた顔をしたリーゼロッテが、思わずエリザの手を握った。エリザも低い声で唸るように言った菖蒲の言葉に、唇を震わせた。
 菖蒲は再び視線をガラスのテーブルに落として説明を続けた。

「病の進行速度は人それぞれらしい。それと、竜鱗病にかかったすべての患者が髪が脱色するわけじゃないそうだ。むしろ、雪路の他に髪の色が抜けたと聞いたのは、1件だけだ。非常に珍しいケースのようだな。そいつの言う通りなら、これから眼の色も抜けていくというが、今は目立った変化はない。……現在雪路の痣の色は最初よりやや黒ずんだた程度だ。半年でこれっぽっちしか病が進まないなんて、普通に考えたらおかしいが、まだたまにしか痛みがないようだから、それを喜んでいいのか悪いのか…」

 やや言葉を切って、菖蒲は「それからもう1つ、不可解な点がある」と付け足した。

「不可解?」
「ああ。竜鱗病はここ2、3年前あたりからいきなり広まり始めた病で、患者もそれなりにいる特別珍しい感染病ではない。だから半年でこれだけ情報が集まったわけだが、その情報と雪路の病の進行に食い違いがある」

 前かがみになった菖蒲が、声のトーンを落として言った。思わず皆身を乗り出して耳を傾ける。

「通常竜鱗病は痣が深まることで死に至るという原因不明の感染病だと言われている。痣の大きさは人にもよるが、だいたいこれくらいだそうだ」

 手を開く。大人の男性の手のひらの大きさといいたいのだろう。「ところが、」菖蒲は続けた。

「雪路のそれは、はじめはこれの半分くらいしかない小さな痣だった。ところが今じゃ脇腹から腰、胸にかけてまで広がっている。竜の鱗が、侵食してるみてぇに…」
「広がって?」
「理由はまったくわからない。薬も効くかどうかは不明だが……それでもナギ、お前に頼みたい」

 冷えてしまった紅茶を一気に飲み干したナギが、視線を菖蒲に向ける。いつになく鋭い視線に、戦闘職ではない菖蒲はたじろいた。

「……それで。真砂さんが言ってた高価な薬っていうのは?」
「特効薬はないが、病の進行を遅らせて傷みを抑える薬はあるらしい。それのことだ。普通の痛み止めじゃ効かないようだからな。調合書も手に入れてある、が、材料がはっきり言って一般人には到底手の届かない代物ばっかでな。ぶっちゃけると、今の汀と岬にはまだ手が届かねえ素材もある……手伝ってくれるんだろ?」
「当然」
「凪、お前の実力は昔から認めてるつもりだが、中には火竜の延髄なんてシャレになんねぇ代物
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