2 「竜鱗病」
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と向かった。昨日、リーゼとエリザを腕に囲ったとき、心に決めたことだ。
その宿には、雪路達シノノメ楽団が泊まっていた。
「マサゴ・シノノメ様ですか? 少々お待ちくださいませ」
小さな部屋に通され椅子に座って待つこと数分。思ったより早く真砂はやってきた。
酔いを引きずっているようにも見えない。今日もいつもどおり夜明けと共に起きたのだろう。
「お早うございます、凪」
「おはようございます。…突然押しかけてすみません。あの、雪路の病について、詳しくお聞きしたいんです」
「なんですか、藪から棒に……。貴方は、ナギ・カームゲイルとなったのではないのですか?」
「……そうです。今の俺は、もう天満凪じゃない。だが、雪路の、雪路と汀、岬の兄であることは変わりません。これからも、ずっと…。妹を守りたいと思うのは、兄として当然のことではありませんか?」
「……」
真砂はじっとナギを見つめていたが、やがてふっと柔らかく笑った。
「そうですね。申し訳ありません。血は繋がっていなくとも、貴方はあの子達の立派なお兄様でした。8年経っても、それは変わらないのね……、…あの子達が、慕うはずだわ。いいでしょう。お話します。一番詳しくご存知なのは菖蒲さんですから、ちょっとたたき起こして来ますね。少々お待ちくださいな」
「あ、いや。まだ寝てるんでしたらまた後日でも…」
「いいえ。良いのです。東雲楽団の楽団医ともあろう者が、太陽の天高く昇り詰めるまで布団でぐだぐだしているなど言語道断。昨日は随分はしゃいでいたからと大目に見てやっていたのですが、起こす良い理由ができました。ついでに汀達も起こして参りましょうね」
「雪路は……?」
「雪路さんは今、お部屋でお手紙を書いているとのことでしたが…少々聞かれると気まずいでしょうね。どうにか外出させられないでしょうか……。とりあえず、皆を起こして参りましょう」
真砂が席を立ち、きびきびした動作で戸を開ける、と、誰かの額に戸の角がドンと当たった音がした。痛くもないのに思わず自分の顔を歪める。痛そうな音につられた。
「痛ぁ!」
「だっ、大丈夫、エリザ…!?」
「……あら、貴女がた。エリザさんと、リーゼロッテさんでしたか。このようなところで盗み聞きとは、随分と高尚な趣味ですこと」
「「ひえっ。す、すみません!!」」
首をすぼめて戸の横に整列すると、厳しい目で自分たちを見る真砂を上目遣いに見やる。小動物さながらの様子にやれやれと目元を緩めた真砂は、そのまま「お入りなさいな」と室内へ2人を促すと、階段を上っていった。
そろそろとナギの向かいのソファに並んで座った2人は、ナギの静かな目線に居心地悪そうに身じろぎした。
「…で? なんで2人はこんなところで立ち聞きしてたの?」
「
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