2 「竜鱗病」
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えば作ってくれるところもある。この宿がそうだった。食料を自分で買って渡せばさらに割安になる。
ナギの他にもテーブルに突っ伏してうめいている男どもが見られた。昨日の宴の飲み比べに参戦した者たちだろう。誰も彼も水が並々継がれたコップを抱えるようにして倒れている。てきぱき動いて水を取り替えてやったり、吐き戻しそうになるやつを宿の外に叩き出したりしているのがこの宿のおかみさんだ。
「あ、昨日の英雄さんね。おはよう。お宅もお水飲みます?」
「お願いします……」
「はいはい、ちょっと待っててね。あと朝食も今持ってきますから。ルイーズちゃんは何食べる?」
「ニャー、うニャー…」
「我が家特製のサシミウオの燻製あげようか」
「にゃっふー!! ありがたいニャ! いただくニャ!」
「うふふ。いいのよー、かわいいから」
頭を撫でられたルイーズはご機嫌で鼻歌を歌い始めた。ナギのあずかり知らぬところで、どうやらこのメラルーは随分村の女性たちに気に入られたらしい。
出てきた朝ご飯を美味しくいただいて、ルイーズはお土産に燻製をもう1本もらって宿をでる。裏庭では少年が仲間たちにファンゴの牙を自慢していた。
「にゃふふ。ここはいっちょニャアが旦那の武勇伝を聞かせてやるニャッ!」
「は?」
「布教活動っていうのニャ。ニャア知ってるニャ。これで旦那の印象もぐぐーんとアップニャ!!」
大事そうに抱えていた燻製サシミウオを背中に背負いなおすと、ずんずんと大股に子供たちに近づく。昨日の英雄と共に戦っていたメラルーだと気づいた少年少女はわっとその猫を取り囲んだ。
何がどうなったのかは分からないが、見ているうちににルイーズが真ん中の岩に立って燻製サシミウオを太刀がわりにブンブン振り回し、ナギの戦いの実演をしつつその凄さを語るという器用なわざを繰り広げた。周りでは子供達がいちいち「おお!」とか「わあ!」とかルイーズの調子に乗るような感嘆の声を出していたから、まあいいのだろう。
何がいいのか凪自身でもわからなくなってきたが、メラルーである彼女が村に溶け込んでいく様子を見れるのに悪い気はしない。
「お、来たな。よしよし、じゃあチミ、ちょっとこっち来い」
ゆっくりと石階段を上りのれんをくぐると、ギルドマネージャーがカウンターからすたっと着地して迎えた。確かこの人は昨日大樽1つ分と小樽2つ分くらいのの酒をまるまる飲み干していたはずなのだが(当然昨日の飲み比べ優勝者である)、なぜこんなに普通にケロッとしているのだろうか。最早ザルを通り越して枠なのか。ナギはその半分も飲んでいないというのにこのザマだ。
会議室に連れて行かれた先にいたのは、村長と受付カウンターのシャンテ。目が合うと、何故か嬉しそうに笑いかけられた。
「ええと、何か?」
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