2 「竜鱗病」
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翌朝。大人たちはみなことごとく二日酔いに襲われ、しかめつらをしながら昨夜の片付けをしていた。
ファンゴの骸は少しずつ素材をいただいたあと崖の下に落とすこととなる。剥ぎ取った素材はナギの意向で全て村のものとしてよいとのことだった。ひとつひとつは大した額ではないものの、数が数なので臨時収入を得た村人たちは大喜びである。それで村に新しくアプトノスを1頭買おうとか、近くの街に看板を立てて(この掲示許可を得るための費用が馬鹿にならないのだ)もっと観光客を増やそうとか、すでにいろいろと勝手な希望は飛び交っている。といっても、最終的に決定を下すのは村長含む村の有力者達の集会であるが。
ナギも結局昨夜は村の宿に泊まりこみ、昼近くになってからひどい頭痛に呻きつつベッドから起き上がった。いつもよりさらに1時間遅い起床である。
たっぷり寝て元気なルイーズを先に下に行かせ、のろのろと着替えを始めると、不意に部屋をノックする音が聞こえた。
「ぅあい、どうぞー……」
自分の声が頭に響く。サービスとして窓際のテーブルに置いてある渓流の水入りのボトルを飲んだ。ぬるい。部屋にいちいち水道が通っていないのが恨めしいが、文句を言っても仕方がない。22年まともに酒など飲んだことがない(たまにルイーズがせしめてくる酒は基本料理酒として使ってしまうため)のに、いきなり昨晩浴びるように飲んだナギが悪いのだ。
「し、失礼しますっ。あの、ハンターズギルドの方から速達の書簡が届きましたっ」
「俺に?」
「は、はいっ」
敬語も怪しくちらりと顔をのぞかせたのは、この宿を営む夫婦の息子だった。まだ7、8歳と元気なさかりなのに親の手伝いをするとは感心、と思ったら、どうやら今日は単に父親が使い物にならないため母親にこき使われているという裏があったようだ。感動を返せ。
少年も先日のナギの戦いぶりを目の当たりにしたうちの1人なので、どうもナギに尊敬や憧憬の念を抱いているらしく、目をきらきらさせながら手紙を手渡すと握手をせがまれた。苦笑しながら応じ、ついでに昨日の戦い中いつの間にか懐に入っていた折れた(“折った”が正しい)ファンゴの牙をやった。綺麗に細工されたものや怪我のないように研磨されたものは市でも見るが、まだ生々しさが残るファンゴのそれは、8歳の子供が手にするにはなかなか貴重なものだ。
案の定少年は飛び上がって喜び、大きく手を振りながら階段を駆け下りていった。
二日酔いで気分は最悪だが、なかなか悪くない心地だ。
書簡はいかにも簡潔だった。要するに12時になったら集会浴場に来いと。まだあと1時間弱あるから、間に合うだろう。
呻きながら下に降りてルイーズの向かいの椅子に座る。
一般に料理は出さず、ただ部屋を貸すだけというのが宿というものだが、余分に金を払
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