五十五 図南鵬翼
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うやくナルトは安堵の息を落とした。
波風ナルを木ノ葉の里人に認めさせる。これはその為の第一歩だ。
だがその為には、彼女一人の力で我愛羅を止めてもらわねばならなかった。そこでナルトは君麻呂と香燐に頼んだのだ。うちはサスケと春野サクラが彼女の闘いに介入しないようにと。
仮に三人で我愛羅を止めたとすれば、どうなるだろう。他の下忍より抜きんでいる優等生と憎き九尾を宿す落ちこぼれを比べたら、人々はどちらに目を向けるだろうか。
当然、うちはサスケだ。
口々に「流石うちは」と声を揃えてサスケを褒め称え、他の二人の存在が薄れてしまう。そんな光景が容易に描かれる。だが、それでは駄目なのだ。
波風ナルが自分の力のみで里を救わなければいけない。且つ我愛羅と同じ境遇であった彼女だからこそ、ナルトは二人の戦闘をただ見守っていた。
『九喇嘛』が出てくるまでは。
流石に一尾に加えて九尾までが姿を現したとなると、状況は一転する。守鶴と共に木ノ葉の里を九尾が襲来しに来たのだと勘違いする里人がいないとも限らない。
だから終始戦闘を見守るはずだった態勢を、ナルトは崩した。怒りで我を忘れかけた『九喇嘛』を鎮めるために。
今一度、ナルと我愛羅の姿を瞳に映して、ナルトは微笑んだ。しかしすぐさま顔を引き締める。
『ナルト!すぐに来てくれ!!大蛇丸様が…ッ』
切羽詰まった声が脳裏で響く。
【念華微笑の術】で助けを求めてきた多由也の言葉に、ナルトは眉を顰めた。了承を返し、地を蹴る。
背後の木へ飛び移った彼は、視線を前方に向けたまま口を開いた。
自分達を監視していた存在へと。
「伝えろ」
葉陰に紛れ、僅かに蠢く木の幹。
ナルに向けていた穏やかな眼差しとは程遠い、冷やかな視線でナルトは告げた。
「一尾・九尾、共に回収は失敗した。次の機会は今から三年後だ…」
最後に一言言い捨て、彼は幹を蹴った。さわさわと揺れる深緑が木と同化していた者の存在を醸し出す。
「折り入って連絡する――――マダラ」
中忍試験会場。
紫の色を成す結界奥では戦線が膠着状態となっていた。
片や魂を半分抜き取られ、片や全身を刀で突き刺され。
身動き一つすら満足にとれぬ状況下、三代目火影――猿飛ヒルゼンは己の死期を悟った。最後の力を振り絞る。
ズゾゾ…と悪寒と共に引き摺りだされてゆく自身の魂を、大蛇丸は悄然たる顔で見下ろした。ヒルゼンを見る。何処にこのような力があるのか、と彼はヒルゼンの老いた身体を愕然と眺めた。
「共に逝こう、大蛇丸……」
再び死を宣告され、大蛇丸はギリリと奥歯を噛み締めた。否が
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