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老人の一時
準備
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渓流。
 山の中腹に存在しているユクモ村からガーヴァの竜車を走らせて一刻もせずに辿り着く緑豊かな山地。 観光や温泉以外に林業で有名なユクモ村の経済を支えている重要な土地だ。 この地に自生しているユクモの木は良質で非常に強靭な木材として最近は至る所から発注依頼が来ている。 相応の加工を施せばモンスターとも渡り合う武具にもなる為、今まで金属や鉱石、モンスターの部位を武具としていたハンター界に新たなジャンルを生み出し昨今注目を集めている。 とはいっても、木材がここでしか取れないし、まだまだ加工できる武具も少ないことから研究期間と言った方が正しいかもしれない。

「ん〜〜いい天気! 空気もおいしい! 絶好の狩り日和ですね師匠!」
「相手や作戦如何によっては淀んだ天気の方が都合が良い時もある。 ハンターや相手によって絶好の狩り日和の条件は変わる物だぞ」
「そんな話してるんじゃないんですよ〜。 ホント素直じゃないですよね師匠って」
「歳を取れば色々歪むものだ」

 自嘲気味に呟いてガーヴァの竜車から様々な荷物を降ろして行く。 ベースキャンプの骨組や支給品ボックス、納品ボックスなど、ギルドから借り受けた様々な道具を降ろし、設置していく。 支給品の中身を覗くと応急薬、携帯食料などの基本的な道具がしっかり入っているのが確認できた。 

 本来なら、自分自身の命を守るのは自分の役目。 それを手助けする道具の管理も本人の役目なのだが、ハンターとは普段の生活費だけではなく命を守る防具、相手の命を狩り取る武器、それらは非常に高額なのだ。 命を賭けてる以上、報酬も一般的に見れば破格なのだが、装備品等に多額な金銭が必要な為一般人より貧困に苦しみ、そして命を賭けて戦っているハンターも珍しくない。 そんなハンター諸氏達への一種の救済策として考案されたのがこの支給品だ。 緊急用の塗り薬にも飲み薬にも使える応急薬などの基本的な道具はギルドの負担でこうやって一定量支給されるようになった。

「君はキャンプの組み立てを済ませておきなさい。 私は飲み水を汲んでこよう」
「え〜? 一緒にやっちゃいましょうよ〜。 か弱い女の子一人に重労働なんて……うぅ、なんてひどいお師匠様」
「一人でやるのは訓練所以来だろう? いい加減一人で出来るようになりなさい。 大体、か弱い女子はこんな仕事になど就かんし、はっきり言ってここから水を汲んで往復する方が重労働だろうが」

 ベースキャンプは寝泊まり休憩の為に使われるのでモンスターが来れない険しく狭い場所に建てるのが定石だ。 結果として、生き物に必需品の水の確保場所からも遠くなるのだがそこは仕方ないだろう。 わざとらしい嘘泣きをし始めた弟子にピシャリと言い放ち、大きな桶を担いで近くの川へ歩を進めていく。 

 薄情な師匠ーー! と背後か
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