準備
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「グ、オオオオオォォォォオ!!」
「ヤアァァァァァァァァア!!」
いい加減耐えれなくなったのか、アオアシラは無理矢理身体を捩って、振り向き様に剛腕を繰り出してくる。 それと全く同時、彼女も一回転して太刀を腰溜めに構え、退くどころか更にアオアシラとの距離を詰める。 剛腕が彼女の網笠をかすり過ぎて行く。 太刀の刃はアオアシラの美しい毛皮を切り裂いて行き、通った後を紅い血で染め上げる。 横を走り抜け、太刀を背に収める。 アオアシラはと言うと、多重なる連撃で脚は傷だらけ。 さらにそこに腹を切り裂く鋭い一撃を見舞われ、振り向き様に放った勢いを殺しきれずに地を転がって倒れこんでしまう。
「(行ける……! 動きは特別変わってないし、あの危険な腕の動きも見える……! 脚に深手を与えたから、動きも鈍るはず……! このまま……、行ける! 行ってやる!!)」
アオアシラが起き上がると感じると、再度太刀を構えなおす。 その顔は決して相手を侮っている顔ではないが、驕っている。 己の優位性を信じて疑わず、猛然と突き進みそうな、そんな危険な揺らめきの炎を瞳に宿し、アオアシラへと肉薄して行く。
対するアオアシラも、ここまで自分を傷つけた矮小な存在を許すわけもなく、目に見えて気が高ぶり、大きく立ち上がって吠え猛る。 口から洩れる息が白く濁り、目は怒りに燃えて彼女以外の存在が思考から消え失せる。
アオアシラも彼女が動き出すと同時に走りだし、大きな体を目一杯使って彼女を押し潰そうと飛び込んで行く。
一人と一匹。 人とモンスターとの命の削り合いが白熱して行く。
さて、ここでそんな一人と一匹の闘いを眺めていた老人がふと何か思い立ったように視線を背後へと向ける。
モンスターが目の前に居るというのに、初心者でもやらない様な愚行だが、老人はは気にしていなかった。 老人自身、あのアオアシラを目のした時からほとんど興味を失っていたのだ。 餌の取り方も、ほとんど足音を隠せていなかった弟子の急襲を見事に許した危機管理も、そして力にのみに任せ切ったあの連撃も、アオアシラという個体から見ても総じて未熟。 子供の遊戯にも程があると思うくらいだ。
恐らく、一人立ちしてからこれと言った危機に直面していないから、学ぶ機会も無かったのだろう。 本来はジャギィやブルファンゴなどの外敵と戦う内に身に着く類のモノがあのアオアシラから全く感じられない。
「……漁夫の利……か。 これは少し、利用させてもらうとするか」
うっすらと笑みを浮かべながら、時々危なっかしく立ち回る弟子を一瞥する。 この場を離れるのは師としてどうかと思うが、まぁあの程度の小物に負けるのなら未来は無い、と弟子を千尋の谷に突き落とすことをにべもなく決め、背後で機を窺っている存在を感じながら歩
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