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老人の一時
準備
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いことなのだが、少しは考える力も身に付けさせた方が良かったかもしれない。 と早速自らの訓練課程に疑問を持つが、所詮後の祭りである。 仮にそうしたとしても、根本的に考えるより動く、を体現している彼女に何処まで効果があるのかは疑問であるが……。

 斬り方が悪く素材としての需要が見込めない部分も多々あるが、なんとか使える部分を剥ぎ取り、血の臭いにつられて増援が来ない内にその場を離れていく。 目指す先は地図上でエリア6と記された位置。 巨大な滝の根元で、その奥には洞窟の入口が隠れている。 滝から落ちてきた水が緩やかに流れていき、川を下って地域全体へと流れ込んで行く。 

「速く来てくれませんかね〜。 できれば日が沈む前には帰りたいんですけど」
「それは君次第だな。 そして狩り場で気を抜くなと教えたはずだ。 もうそこに居るぞ?」
「ッ!」

 弾けるように振り向き、反射的に背の太刀を抜こうとするのを肩を掴んで押し止める。 目標はまだ気付いていない。 ゆったりと闊歩し、目線は川の中を凝視している。 舌をダラリと出している状態で川を眺め、おもむろに両足で立ち上がり、分厚い甲殻で包まれた前足を一閃させる。 水中から弾き飛ばされ、弧を描いて吹き飛んで行く大きな魚。 その魚を大きな口で丸齧りしていく。
 青熊獣アオアシラ。 温暖湿潤な地域の山や森林などの自然豊かな地域に生息している牙獣種だ。 ユクモ村でも、比較的馴染み深いモンスターとして知られている。 ユクモ村近辺の初心者ハンターがまず最初に戦うことになる中型のモンスターで、動きも素早い訳ではないので、基本を押さえて油断さえしなければ彼女一人でも立ち回ることは可能だろう。
 
「……まずは、君一人で挑んでみなさい」
「え? 一人で、ですか?」

 老人の突然の言葉に獲物が目の前に居るのを忘れて顔を見上げる。 老人は一言、そうだ、と呟き、真摯な瞳を弟子へと向ける。
 今までアオアシラに挑んだ事は何度かある。 と言っても、それは師が常に重弩を構え、危険な攻撃が来ないように相手を引きつけてくれていたからこそ、立ち回れていた。 だが、今回師は『一人で』と言った。 彼女にとっては、援護の無い狩猟はこれが初となる。

「これから君はハンターとして生きていくのだろう? 依頼を受けるか受けないかの自由は存在するが、奴は割と多く見かけるモンスターだ。 あの程度は一人で狩らねば話しにならんぞ」

 少女の目を見、一言一言しっかりと言葉を紡ぐ。 ハンターにとって、狩り場での強さはハンターそのものの価値を示す。 なればこそ、逃げずに済むように強くならねばならない。 

「ハッ。 そう怖気づくな。 私も保険として何時でも動けるようにしておく。 思い切り、ぶつかってきなさい」
「……はい!」

 獲物に気
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