第四幕その三
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日の死刑囚の中に一人の若い婦人の方がおられますね」
「それは聞いているよ」
シェニエは答えた。
「名前は確か・・・・・・。レグレイといったね」
「はい」
「あの人が何か」
「あの方の替わりに私が行きます。断頭台に」
「馬鹿な、そんなことが」
シェニエはマッダレーナだけでなくジェラールも見た。鉄格子の向こうにいる彼は黙って頷いた。
「そうか、名前を書き換えたのか、君が」
「そうだ」
ジェラールは答えた。
「彼女もまた無実で死ぬ身だった。マッダレーナは彼女と替わった。それにより一人の罪なき女性の命が救われる」
「そうか」
シェニエは全てを理解した。そしてそれを受け入れた。
「わかった」
彼は言った。
「私は行こう、貴女と共に」
「はい」
マッダレーナも頷いた。
「それこそが私の願いです」
「そうか、ならば共に行きましょう。最後の戦いに」
ジェラールはそれを黙って見守っていた。だがやがてそこから立ち去った。
「俺にも最後の仕事がある」
彼もまた命を捨てていた。
「この二人を救わなければ。何としても」
彼は向かった。死を司る男の下へ。
「同志ロベスピエール」
彼の同志でもある主人でもある男。ジャコバン派の絶対者だ。
「何としても彼から手に入れなければ。二人の命を」
決意した。そして一直線に向かった。
だがシェニエもマッダレーナもそれに気付いてはいなかった。ただ硬く握手をしていた。
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