1章
老人と少女
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準備して行く」
「速く来てくださいね〜!」
まさしく嵐のように過ぎ去って行った彼女を尻目にやれやれと腰を上げる。 茶を残すのは名残惜しいが、熱いので一気に飲むことは出来ないし、ゆっくり味わおうものなら再度家の中に嵐を招き入れる事になる。 一度ならともかく短時間に二度も至福の時を邪魔されたくはない。
私服を脱ぎ、壁に掛けてある『ユクモノ・地』を身に纏う。 彼女が着ていた物より上質な素材を用いて作成されたこの防具も、ユクモ地方独特のガンナー装備である。 見た目的には防具ではなく一般的な和服と大差ないが、これはれっきとした対モンスター用で考案・開発されている防具で有り、布地であろうとも結構な防御力を持っている。
「狩りに喜びを見出す……か。 否定はせんが、度が過ぎれば身を滅ぼすことになる……。 それをどう教えるかも、私の務めか」
こんな老骨を師と仰ぐモノ好きな少女の事を考え、『ユクモノ重弩』を背中に固定する。 本来の得物とは違うが、彼女のレベルに合わせた武器を背負い、今か今かと自分の事を待っているであろう弟子の為に軽い小走りで家を後にした。
○
「う〜ん。 やっぱりそんな大型の依頼ってありませんね〜」
「当たり前だ。 ギルドからすれば、観光地として有名で危険も少ないこの村に依頼を回す意味も無いのだろう。 大抵は、周辺の縄張りから逸れた個体を狩るだけで十分だしな」
はっきり言って、不定期で訪れる休暇目的のハンター達に頼み込むだけで村周辺と山道の安全は確保されている。 よく依頼が来るとすれば鳥竜種が多いのだが、定期的に数を間引いておけば大きな群れにならずに調和を取ることが出来る。 この村は辺境にあるものの、ある程度の調和が取れている珍しい土地だと言える。
「それでも実力が無いと困るというのは確かだがな。 未来になにが起こるのかは誰にもわからん。 ……アオアシラの狩猟依頼か。 これにしよう」
「はーい」
壁に貼られていた数少ない依頼書から比較的よく目にする依頼を剥がし取る。 内容は近場の渓流でアオアシラが確認されたので狩猟、もしくは退治してほしいとの依頼だった。 渓流はこの村からも近く、林業目的で一般人も立ち入る事が多い。 しかし、アオアシラは生態もほとんど研究されており、苦手な音爆弾等を持ち込んでおけば命の危険になる事はそうそうない。 さほど緊急性の高い依頼ではないが、それでも一般人が立ち入る空間にモンスターがいるのは危険が付きまとう。 無駄に大きなプレッシャーが圧し掛からず、それでも村人の危険を取り除く仕事という責任感がある。 初体験の中型クエストでは中々丁度良いと言えるかもしれない。
「無駄に気負うなよ。 基本は身体に叩き込んでいるんだ。 余程の事が無い限り、心配はない。 だが…
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