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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
懺悔と願望と安楽と
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の内の少女の方は、私が切り捨てた筈だった仲間のひとりだった」

私は二度、彼女を裏切った。
英霊エミヤになる以前に切り捨てたことと、自分殺しの為に契約から意図的に逃げ出し敵として立ちはだかったこと。
そのどちらも許されざる悪徳だ。救いようがない。
だが―――それでも彼女は私を赦した。
彼女の本質は、どこまでも優しく甘い。
そうでなければ、無知な衛宮士郎に聖杯戦争の何たるかを教えることもしなければ、裏切り者を許すなどということは絶対にしない。

「彼女に言われたよ。今からでも自分を赦して許してやれと。幸せになれと」

言葉にせずとも、彼女の意図は伝わっていた。

「だが、自分が歪だと理解しているからこそ、他人の為に在ろうとすること以外への幸せを見出せていないのだ」

「その少女の傍にいれば、答えは見出せたんじゃないのか?」

「それが無理だったから、今ここにいる」

「その離別を切っ掛けに、お前はここに来たのか」

「そうだな。本来消えゆく運命だった私は、ある意味では救われたのだろう。―――だが、その救われた命の扱い方を掴めずにいるのなら、無駄もいいところだな」

一瞬、一陣の風が吹く。
それと共に訪れる静寂。
考えるような仕草をする神奈子の横顔を見つめながら、答えを待つ。
心地よいとも思える静寂は、互いの関係性を象徴しているようで、自分は受け入れられているのだと実感することが出来る。

「―――別に、お前が望むように生きればいいんじゃないか?」

「望むようにすれば、私は悲惨な末路を遂げるかもしれないとしてもか?」

「そうはならないさ。お前は二度過ちを犯したが、罪を受け入れ前に進み続けている。ならば、何も心配することはないさ。理解し、受容した上で尚二度同じ過ちを繰り返すような愚者だというのであれば、私の目が腐っていただけの話だ」

「厳しい意見だな」

「それに―――後悔した、ということは、やり直したかったということだろう?ならば、おのずと答えは出るんじゃないか?」

そう答えた神奈子の表情は、どこまでも優しい。

「悩みというのは、誰かに打ち明けた時点で得てして答えを自らで出しているものなんだよ。それを後押しするために、願掛けや神頼みというものを行うのが人間の持つ特性だ。宗教というのも、個人の持つ思想を大衆の同一のそれとひとまとめにすることで、あたかも高次の思想だと正当化する為にあるようなものだからな。まぁ、それはあくまで神が存在することを証明できない一般人側の理屈に過ぎないが」

一般人からすればそもそも、その宗教の名前となった人物が果たして存在していたかなど証明することは不可能。
宗教に限らず、歴史の偉人なんてものは例外なくその枠内にある。
だからこそ英雄次第では
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