第百二十九話 一月その十二
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「陣羽織もな」
「あの具足と陣羽織で上洛され」
「公方様にもお会いする」
その大軍と共にだというのだ。
「公方様もどうしたお顔になられるかのう」
「公方様も驚かされますか」
「あの方も驚かれる方だからな」
それでだというのだ。
「お見せしたいわ」
「ですか、それでは」
「まず上洛してじゃ」
そしてそこで十万の兵を集めそれからだった、越前に向かうというのだ。
「五郎左、手筈は整えておるな」
「はい」
丹羽はすぐに返した。
「ご安心下さい」
「それではな」
「都のことも勘十郎様とやり取りをしまして」
そのうえで話を進めたというのだ。
「万全です」
「こうしたことはやはり御主じゃな」
丹羽が最もよいというのだ、兵や兵糧を手配したりすることはだ。
「米とはよく言ったものよ」
「近頃よくそう言われます」
羽柴が木綿、柴田が掛かれ、佐久間が退きに加えて丹羽はそう例えられているのだ。米の様に欠かせないというのだ。
「誰が最初に言ったかはわかりませんが」
「世間はよく見ておるのじゃ」
誰が見ているかどうかは大したことではなく肝心なのはそこだというのだ。
「その者がどういった者かな」
「それでそれがしは米ですか」
「猿は確かに木綿じゃ、何でもこなすということでな」
つまり使い勝手がいいというのだ。
「権六は掛かれつまり攻めで牛助は退きで殿軍じゃ」
「お二人のそれですか」
「実際攻めは権六、退きは牛助じゃ」
二人共それで定評がある、それぞれ織田家の武の二枚看板であるがその得意とするものがあるのだ。
「そうなるのじゃ」
「そういえば他にも様々に言われていますな」
「四天王とかも言うのう」
今度は織田家四天王である。
「筆頭は権六、御主に久助にじゃ」
「それと明智殿ですな」
滝川に明智も入るのだった。
「幕臣とはみなされずに」
「織田家の家臣としてな」
「それで四天王ですか」
「確かにあの者は出来る」
信長は明智の資質についてかなり認めていた、政でも戦でもその冴えは見事なものがある。
「まさに何でも出来る」
「不得手がないまでに」
「四天王も当然じゃ」
「久助殿もですな」
「うむ、無論この度の戦にも連れて行く」
その滝川もだというのだ。
「御主もな」
「そして明智殿も」
「皆連れて行く。では具足を着るぞ」
こう言ってそのうえでだった。
信長はその具足を着けて城内で出陣にかかる一同の前に姿を現した、それは誰もが目を剥くものであった。
第百二十九話 完
2013・3・19
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