第三幕その七
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の太鼓の様であった。
遂にシェニエの番となった。彼は昂然と裁判所に入って来た。
「いよいよか」
ジェラールは彼の姿を認めて呟いた。マッダレーナの顔が固まった。
シェニエは憲兵達の立ち並ぶ中を進んで行く。兵士達の険しい顔に臆することなく胸を張っている。
そして被告人の場所に来た。裁判官達と対峙する。
「アンドレア=シェニエ」
タンヴィルが彼の名を呼ぶ。
「詩人」
「はい」
シェニエはその言葉に頷いた。
「革命に反することを書き、我々を誹謗中傷した」
タンヴィルは告発を開始した。
「ジロンドの者達とも親交があった。間違いはないな」
「ジロンド派とは確かに親交があった」
シェニエはそれを認めた。
「だがそれが悪いとは思っていない」
「何!?」
タンヴィルはそれを聞き眉を顰めさせた。
「私はそれが正しいと今でも確信している」
「それは間違いだ」
タンヴィルはそれに対して反論した。
「ジロンド派は革命の敵だ」
「違う」
シェニエはそれに対して反論した。
「彼等は彼等の正義の下に行動しているだけだ」
「ジロンド派は正義なぞ信じてはいない」
タンヴィルは剣呑な声で言った。
「彼等がやろうとしているのは革命を潰すことだ。そして君が行っていることもそれだ」
「それは違う」
シェニエは怯むところがなかった。
「私も彼等も革命に剣を向けてはいない」
「いや、向けている」
これはタンヴィル達だけでなく裁判官達も言った。
「君のそのペンと口が我々への剣だ。君は剣を持った革命の敵だ」
「ペンと口がですか」
シェニエはうっすらと笑った。
「確かに。私はそれを武器にする一人の兵士です」
「兵士などではない」
タンヴィルはそこに突っ込んだ。
「君は刺客だ」
「お聞きなさい」
だがシェニエはそこでタンヴィルを見据えた。あえて睨まなかった。
「貴方に理性があるのなら」
「うっ・・・・・・」
さしものタンヴィルもその告発を止めざるを得なかった。彼は甚だ不本意ながら黙ることにした。
「あのタンヴィルが黙ったぞ」
「あの詩人、只者ではない」
市民達はそれを見て囁き合った。マッダレーナはまだ顔を青くさせている。一言も話すことはできない。
ジェラールは腕を組み沈黙を守っている。しかしその目はシェニエから離れない。
「私は兵士です。銃と剣ではなくペンと口で戦う兵士です。この二つの武器は世の邪悪なることに向けられます」
彼は言葉を続けた。
「私は祖国のことを歌いました。愛するこのフランスのことを。そしてその崇高なる理念を」
「理念か」
ジェラールはそれを聞いて呟いた。
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