第三幕その六
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のサインがあります」
そして告発状を手に取りそれをマッダレーナに見せた。
「しかし今それを消しましょう」
そう言うと自分の名に線を引いた。
「これが証拠です。私は今からアンドレア=シェニエを救うことに全てを捧げます」
「わかりました」
マッダレーナもそれを見て頷いた。ジェラールの心をようやく全て知ったのだ。
「その御心喜んで受けさせて頂きます」
「かたじけない」
ジェラールは頭を垂れた。
「では外に行きましょう、革命裁判所へ」
「はい」
先にジェラールが演説をした場所である。裁判もそこで行われるのだ。
二人はクラブを出た。そして裁判所に向かって進む。
「御覧なさい、あれを」
ジェラールはここで側を通る憲兵達を指差した。
「あの銃やサーベルを。彼等もまた裁判所に向かっているのです」
「彼等も」
「そうです。そしてそこに彼もいます」
「お願いです、あの人を」
マッダレーナは彼等の銃やサーベルを見て不安を覚えた。そしてジェラールに頼んだ。
「わかっています」
ジェラールはそれに対して頷いた。
「誓ったことは必ず守ります」
彼は言った。
「革命は自分達の子供を喰らい尽くす。誰が言った言葉か」
裁判所に来た。既に何人かの『革命の敵』がそこにいた。
「彼等もまた死んでいく。同じ人間だというのに」
彼は今は苦渋と共にその言葉を呟いていた。かっては革命の理念だと思っていたが。
「さあ、いい席を取ったよ!」
「おい、そこは俺の席だよ!」
見れば市民達が席を争っている。この血生臭い裁判も彼等にとっては娯楽なのだ。
「こうしたことも終わらせたかったのだが」
ジェラールは悲しげな顔で俯いた。
かっての王政下では死刑の執行は一大イベントであった。人々はそれを見る為に集まった。そして出店で物を買い酒や菓子に興じながらそれを見て喝采を叫んでいたのだ。
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