第三幕その一
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、それでいいのか!」
彼はここで声をあらわげさせた。
「あの者達にむざむざと殺されていいのか!我々が血により手に入れた権利をもう一度あの腐り果てた貴族達に渡してよいのか!」
「嫌だ!」
市民達はそれに対して言った。
「ではどうするべきか!」
マテューは彼等に問うた。
「戦うべきではないのか!」
「そうだ!」
市民達はそれに応えた。
「戦いだ!戦いだ!」
彼等は口々に叫ぶ。
「ジロンド派を殺せ!王党派を殺せ!」
声は何時しか血生臭いものになっていた。
「オーストリアの奴等を殺せ!プロイセンの奴等を殺せ!」
次第にそれは外にも向いていく。マテューはそれを見て内心ほくそ笑んだ。
(これでよし)
これこそが彼の狙いであったのだ。
革命は敵を欲する。そしてそれは内外に向けられる。
内の敵はジロンド派と王党派だ。彼等は見つけ次第次々にギロチンに送っていく。罪状はどうでもよかった。そこに属していること自体が罪なのだから。
そして外の敵はオーストリアやプロイセン。特に王妃の生家であったオーストリアは格好の敵であった。
「革命は血を欲する」
それは貴族の血だけではないのだ。他国の者、そして革命を担う民衆の血をも欲しているのだ。
マテューはそれがわかっていた。ロベスピエールも。だから彼等は民衆を扇動する。そして彼等を血に誘うのだ。
ここで民衆を血に誘う者達の中で最も弁の立つ者が姿を現わした。
「おお!」
民衆は彼の姿を見て声をあげた。
「ジェラール!」
そこにジェラールが姿を現わしたのだ。
「友よ、よく来てくれた!」
マテューが彼に声をかける。ジェラールはそれに対し大きく手を振った。
彼は市民達から絶大な人気があった。生真面目であり誰に対しても紳士であった。そして誠実かつ情熱的であったからだ。彼に私も野心もなかった。だからこそロベスピエールも彼を側に置いているのだ。
「ジェラール!」
民衆は彼に熱狂的な声をかけた。
「同志達よ」
ジェラールはそれに応え彼等に言った。大きな声だった。
場は一気に静まり返った。ジェラールはそれを確認して言葉を続けた。
「今の我が国の置かれた状況は理解してくれていると思う。知っての通り大変な状況だ」
それは既にマテューが言っていた。だがジェラールの言葉はそれ以上に心を打った。
「ローダンは陥落しヴァンデーでは死闘が続いている。そしてブルゴーニュからも敵が迫っている。我々を滅ぼそうと敵が迫っている」
彼はここで民衆を見回した。
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