第25話 夢
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対する説明。
これ以降が、あの場での俺の行動に対する判断理由の説明。俺に取っては非常に重要な部分。
「俺には、あの場で……。あの瞬間の判断では、有希があのムカデの毒に耐えられるとは思わなかった」
有希の身体の組成は、人間とほぼ同じ材料から思念体によって造られた存在。故に、人間以上の耐久力が備えられているとは思えない。
俺は、三年ぶりに出来上がった新しい家族に対してそう告げた。
そして、
「有希が死亡した場合、今の俺には、オマエの魂を呼び戻す術がない」
……と続ける。気負う訳でもなく、ただ、事実のみを説明する口調で淡々と。
但し、この部分に関しては。……今年の七月七日が過ぎて、俺が、彼女の記録をアカシック・レコードから、俺が望む過去を間違いなく読み取れば、そんな心配も無用となるとは思いますが。
俺が、水晶宮を通じて依頼して有るのはその部分ですから。
羅?星の再封印を俺が行う代わりに、彼女に未来を創る手伝いをして貰いたいと言う願いを……。
もっとも、俺の方が死亡しても二人の絆が断ち切られる事がないのなら、有希を失ったとしても、同じような理由から彼女の魂を呼び戻す事は可能なはずです。
当然、彼女自身が黄泉竈食いを行っていない、と言う条件が付きますがね。
ただ、可能性が有るとは言っても、現実には絶対にそんな実験を行う事など出来る訳など有りませんが。
「前にも言ったけど、俺と、有希の生命の重さを比べたら断然、有希の方が重い」
そして、俺の中の大前提。この部分だけは絶対に譲る事の出来ない事柄を口にする。その他の部分は例え譲ったとしても、この部分に関しては譲る事が出来ません。
それに、理由をすべて話したら、彼女には納得して貰えると思いましたから。
但し……。
但し、納得出来たとしても、受け入れられるとは限らない。
俺を見つめる深い湖にも似た瞳が揺れた。
先ほどまでの少しの不満を発して居た雰囲気は鳴りを潜め、哀しげな瞳。……これは、俺が彼女の瞳を見つめた時に感じたイメージで有り、俺自身の彼女に対するイメージの投射に過ぎない。
しかし、
「貴方と、本当の意味で共に生きて行く事が、わたしには出来るの」
普段通りの口調で、普段通りの表情で、俺にそう問い掛けて来る有希。
彼女の望みは判る。そして、あのムカデと戦った夜も、彼女は最初、機嫌が良かったではないか。
俺が、結界の要石に霊気を籠めていた際に、彼女に傍に居て欲しいと言った時。
さつきを助ける為に、共にがしゃどくろと戦った際も同じ。
「今は難しい」
俺は率直な意見を口にした。その言葉は、当然、彼女の求めている答えでは有りません。
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