第25話 夢
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うやって無事に目を覚ます事が出来たのは、俺には蘇生魔法の効果が有った証明ですから。
そうして、
「俺が、こうやって無事に目を覚ます事が出来たと言う事は、有希が水晶宮に連絡をしてくれたと言う事やな」
……と、そう問い掛ける俺。
そう。蘇生魔法が有って、天が定めた命数が残っている限り。そして俺自身が、冥府の食事に手を出すようなマネをしない限りは、一度や二度死亡したぐらいでは、俺自身がこの世界から完全に消えて仕舞う可能性は低い。
魂の入れ物。つまり、肉体が完全に失われていたら復活出来ない可能性も有りますが。
もっとも、大前提。俺の命数が残されている。……が、絶対に必要な条件なのですがね。
無言で首肯く有希。但し、その首肯きの中に、多少の不満が隠されている。
――成るほど。確かに彼女の不満の意味は判りますよ。但し、彼女の不満や怒りはもう少し後。それよりも先に聞いて置きたい事が有りますから。
それは……。
「その前にひとつ質問。俺の瞳の色は、どうなっている?」
俺と有希の間で、最初に確認を取るべき内容はこの部分と成るでしょう。
俺に取って彼女は、受肉した存在として初めて契約を交わした相手。それに、もし、あのムカデと戦った時に死亡していたとすれば、それも初めての経験。
その自らの死と言う状況が、契約にどのような影響を及ぼすのか、俺には想像が付きませんから。
例えば、相手の真名を奪って縛るようなタイプの式神契約の場合には、真名を奪った契約者が死亡した時に、その契約は自動的に解除されるような仕組みと成って居ます。
もし、彼女との契約が解除されているのならば……。
「大丈夫。黒と紅のオッドアイに変わりはない」
有希が透明な表情のまま、そう答えた。自らの左手の甲の部分に刻まれたルーン文字を俺に見せながら。
「良かった」
彼女の表情と、その仕草を確認した瞬間、我知らず、本当に安堵したような呟きを漏らす。
もしも、彼女との繋がりを失えば、有希に自らの生命を維持する方法が無くなる可能性も有り、俺の方には、また一人の家族を失う可能性が出て来ていた。
色々な意味で……。
有希は何も答えようとはしない。相変わらずメガネ越しのやや冷たいと表現される瞳で俺を見つめるだけ。
……表面上は。
そう。見た目に関しては、普段の……。出会った当初の彼女と、今の彼女との間に差は有りません。しかし、伝わって来る心の内側に関しては違っていた。それは多分、俺の言葉の意味を理解出来たから。
二人の絆が断たれずに、本当に良かった、と言う言葉の意味を……。
目覚めた直後に比べると、ずっと優しい気配を伴った時間が二人の間と、彼女の寝室内に過ぎて行く。
さて、
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