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ヴァレンタインから一週間
第25話 夢
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い。ここは、新しいマンションの有希の寝室。
 しかし、何故、ここに俺が寝かされて……。

 曖昧な記憶。確か、俺は化けムカデと戦って――――
 そう考えながら、ベッドの脇に視線を移す。
 その俺の瞳に映ったのは、椅子に座った姿の……透明な表情をした女神さまで有った。

 俺が意識を取り戻した事に気付いた少女が、自らの手にしていた和漢に因り綴られた書籍から、ベッドの上で横に成る俺へと視線を移した。
 その瞬間、室内灯の明かりを反射した銀のフレームが、僅かに冷たい光を煌めかせる。

「すまなんだな、有希。ちょいと、ヘタを打った見たいや」

 そんな、少し無関心を装うかのような少女に対して、上半身のみを起こしながら、最初に謝罪の言葉を口にして置く俺。
 表面上は普段通り、清澄な湖にも似た落ち着いた雰囲気を装う彼女。しかし、彼女と視線を交わした瞬間に発せられたのは大きな安堵。そして、それに続く軽い落胆。

 安堵に関しては、俺が目を覚ました事について、本当に安心したから。
 そして、軽い落胆については……。おそらく、俺が目を覚ました事に関して。

 そう。俺がこのまま眠り続けて、羅?(ラゴウ)星と俺が直接戦う事が回避される事を彼女が望んだ。多分、そう言う事。

「わたしの事など護る必要はない」

 俺の事をその瞳の真ん中に映したまま、彼女は少し冷たい……。いや、哀しい雰囲気で、そう独り言のように呟いた。
 手を伸ばせば抱き寄せられる位置に存在しながら、何故か永遠にも等しい二人の距離。

 そして、その彼女の言葉の中に含まれて居るのは、微かな怒り。

 まして、その怒りの理由を推測する事も簡単。
 何故ならば、彼女はあの時の俺の状態を、誰よりも確実に知って居たはずですから。

 霊的に繋がり、俺からの霊気の補充を受けて居る彼女ならば。

 真っ直ぐに俺を見つめる彼女と、それを見つめ返す俺の視線が、二人の丁度中心で交わる。
 彼女のそれは、何時もの如き怜悧な、と表現すべき瞳。
 俺の瞳は……。俺の瞳に関しては、自分では判らない。

「ありがとうな、有希」

 唐突に感謝の言葉を口にする俺。但し、俺の意味不明の言葉など既に織り込み済みなのか、普段通りの視線で俺を見つめた後に、微かに首肯く有希。
 そう。この感謝の言葉は、以前に行われた問答の繰り返し。

 彼女が自らの生命を護る必要などない、と言った事に対して、
 俺が護りたいと思っただけだから、有希に止められようと、誰に何を言われようとも関係ない。俺がやりたいようにやるだけだ、と答えた時と同じ状況。

 そして、双方の思いは同じ。
 更に、俺の生命が、有希のそれに比べたら軽い事は今回の例で彼女は気付いたはずです。

 俺が、こ
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