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ヴァレンタインから一週間
第25話 夢
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 ここは……。

 僅かに開いた目蓋の隙間から、人工の照明が産み出す温かみの薄い光が入り込む。

 普段ならば不快に感じる事もないその人工の光源を何故か異常に眩く感じ、顔をしかめ自らの右手で目の部分を覆おうとする。
 しかし――――
 その際に、かなりの違和感。身体が異常に重い。
 更に、軽い酩酊状態にも似た曖昧な記憶と、焦点の合わない瞳。

 そして、大量に掻いた汗で下着が肌に張り付いたように成って居て非常に不快。

 少し首を右に動かす。しかし、矢張り瞳の焦点は合わず、意識は未だ朦朧としたまま。

 背中に感じる柔らかな感触は、ここがベッドの上で有る事を示している。
 それに、僅かに香るこの甘い香りは、病院特有の消毒液と、清潔な……。しかし、無個性なシーツの香りなどではなく、まったく別の香り。
 ただ、この香りは、何処かで嗅いだ事が有るような気もするのだが……。

 まるで他人の身体のようで、少し動かすだけでもかなりの疲労感を覚えながらも首を動かし、周囲の確認を行う。
 その俺の瞳に映ったのは……。
 家具や調度品のシルエットを感じさせない、柔らかい白系統を基調とした部屋。
 そして、人影。華奢なイメージ。かなり、小柄な雰囲気。

 俺が、訳もなくその人影に向かって伸ばした右手を、その人影はそっと取り手の平同士を合わせ、……指と指を絡めるようにして繋いで来る。
 その華奢な手の感触。それに、異常に熱を持った俺の手と比べて冷たい手は……。

「――――蓮花(レンファ)

 俺は、自らの救い出した人工生命体の少女の名前を呼んだ。その瞬間、彼女と繋がれた手に少しの力が籠められる。
 そうか、俺はまた……。

「倒れたのか」

 俺の問い掛けに、シルエットのみのショートカットの少女はやや躊躇った後に、微かに首肯いて答えてくれた。
 俺は、そのシルエットを確認した後に、彼女の方向から明かりを放っている室内灯の方向に視線を向ける。
 いや、逸らせたが正しいか。

 そう。その理由は当然、動かすのにさえかなりの労力を要する身体故に、首だけを彼女の方向へと向けて置くのが辛かったから。
 そして……。
 そして、言葉を発しようとしない彼女の視線が想像出来て、視線を合わせる事が出来なかったから。
 見えなくても判る。感情が籠る事のない瞳に、何時ものように責められて居る俺の姿が。

 そう。念動や電撃を使用する分には問題はない。
 しかし、瞬間移動を多用した翌日にはこうやって倒れ……。

「目が覚めたら、必ずお前が居てくれたんだな」

 仰向けになり、目を瞑りながらそう呟く俺。
 尚、酷く疲れたような口調になったのは、この場合は仕方がないだろう。実際、身体がだるく、無理に意識を保
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