第一幕その一
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じゃ」
「そうですね」
ジェラールの返答は何処か空虚だった。
「ではわしも休ませてもらうとしよう。この身体も時には休みが必要じゃ」
彼はそう言うと家令達が入っていった扉を開けた。そしてその中にゆっくりと入った。
「そうして六十年もこの城にいるのですね」
ジェラールは父の後ろ姿を見送って言った。
「あの高慢な連中の為に汗を流し何もかもを捧げてきた。自分の妻の死に目にも遭えなかったというのに不平一つ言わなかった」
そんな父だからこそ彼は尊敬することができた。愛することができたのだ。
「それをあの連中は当然のように考えている。我々は仕え、跪くのが当然だと思っている」
彼はここでサンルームを見渡した。
「虚構と偽善に満ちた部屋だ。所詮は幻影に過ぎない」
その黒い瞳には怒りが浮かんでいた。
「絹やレースで着飾ったあの愚かな連中が笑い合い踊るこの場に一体何があるというのだ、何もないではないか」
呟いているだけで怒りが満ちていく。
「そして楽しい音楽にうつつを抜かしているがいい。そのうちに貴様等は自らの下僕に裁かれるのだ。そして行く先は処刑台だ」
もし誰かに聞かれたらただではすまないだろう。しかし彼は自身の怒りを抑えることができなかったのだ。
そこへ何人かやって来た。三人いる。
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