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アンドレア=シェニエ
第二幕その九
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ない。君ならば既に気付いていると思う。すぐに手を引くんだ」
「それはできない」
 だがジェラールはそれを断った。
「私は革命に命を捧げたのだ。今更退くことはできない」
「そうか。なら仕方ないな」
「そしてもう一つ言っておこう」
「何だ!?」
「彼女は私のものだ。さあ、渡してもらおう」
「クッ」
 シェニエは杖を構えた。ジェラールはそれに構わず少しずつ近付いてくる。その手には拳銃があった。
「まずいな、このままでは」
「一つ聞きたい」
 ここでジェラールはシェニエに尋ねてきた。
「何だ」
「良かったら君の名を教えて欲しいのだが」
「私の名か」
「そうだ。どうやら名のある方とお見受けするが」
「そうか」
 ジェラールには別に悪意はない。彼は紳士的な立場から尋ねてきているのだ。
「わかった」
 シェニエは頷いた。そして静かに名乗った。
「私の名はシェニエ。アンドレア=シェニエという」
「アンドレア=シェニエ!?まさか」
 ジェラールはそれを聞いて大いに驚いた。
「まさかこんなところで」
「どうやら私のことを知っているようだな」
「知らない筈がない、君はお尋ね者だからな」
「そうか。では今ここで私を射殺するかね。革命に対する罪で」
「うう」
 ジェラールは戸惑った。彼はこうした時、弱い女性を守る男を撃てる男ではなかった。

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