第二幕その九
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
ない。君ならば既に気付いていると思う。すぐに手を引くんだ」
「それはできない」
だがジェラールはそれを断った。
「私は革命に命を捧げたのだ。今更退くことはできない」
「そうか。なら仕方ないな」
「そしてもう一つ言っておこう」
「何だ!?」
「彼女は私のものだ。さあ、渡してもらおう」
「クッ」
シェニエは杖を構えた。ジェラールはそれに構わず少しずつ近付いてくる。その手には拳銃があった。
「まずいな、このままでは」
「一つ聞きたい」
ここでジェラールはシェニエに尋ねてきた。
「何だ」
「良かったら君の名を教えて欲しいのだが」
「私の名か」
「そうだ。どうやら名のある方とお見受けするが」
「そうか」
ジェラールには別に悪意はない。彼は紳士的な立場から尋ねてきているのだ。
「わかった」
シェニエは頷いた。そして静かに名乗った。
「私の名はシェニエ。アンドレア=シェニエという」
「アンドレア=シェニエ!?まさか」
ジェラールはそれを聞いて大いに驚いた。
「まさかこんなところで」
「どうやら私のことを知っているようだな」
「知らない筈がない、君はお尋ね者だからな」
「そうか。では今ここで私を射殺するかね。革命に対する罪で」
「うう」
ジェラールは戸惑った。彼はこうした時、弱い女性を守る男を撃てる男ではなかった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ