十四話
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ただけだ」
あの時村を守ろうとしたのは俺の正義感であり自己満足のようなものだ。
「へえ、随分と謙虚ね。あれだけの数を相手に時間稼ぎするだけでも村を守ったといえるんじゃない?」
「そうでもないさ、お前らの軍がすぐに来たしな」
それに五胡がらみだったので俺にも責任があったのだ。
「なるほどね。ああ、そういえば貴方名前は?」
「稲威だ、字はない」
「稲威ね。私は名は曹操、字は孟徳よ」
『曹孟徳は分かるわよね?』
(いや、覚えてはいるがあまり考えないようにしようと思う)
『それもそうね、分かったわ』
「曹操か、よろしく頼む」
「ええ、よろしく。それで、貴方は私のところの武将になりたいってことでいいのよね?」
「え、こんな奴を武将にするのですか華林様!?」
「アンタ事前に話を聞いてたでしょ? 馬鹿なの? 馬鹿なのねこの猪!」
「な、なんだとー!?」
曹操の発言に、俺も少し驚いたが、アホ毛が過剰に反応し、それを猫耳に罵られていた。
中身も中々濃いみたいだな、ここの連中は。
『アンタも人のこといえないでしょうが』
(なに? それは聞き捨てならねえな照姫)
『あーはいはい、そんなこといいから。ほら、そろそろ話が戻るわよ』
「春蘭、桂花、黙っていなさい」
「「はい、華林様」」
曹操の一言で息ぴったりで返事をする二人。
ああ、なんかもう、どんな上下関係の構図か分かっちまった。
「それで、どうなのかしら」
「俺はまだお前のことについてよく知ってない。だから少しの間、客将としてお前がどんな奴なのか見定めさせてもらっても良いか?」
「ええ、いいわよ」
要望を快く了承してくれた曹操に対し、俺は深々と礼をした。
「良かったな稲威。まあお前ならすぐ華林様のお気に召されるだろう」
顔をあげると、夏侯淵が微笑みながら手を差し出してきた。
「ああ、お前のおかげで一兵卒から志願することにならなくて良かったよ。ありがとうな、夏侯淵」
「あら、秋蘭。貴方大分稲威を買っているのね」
「はい、華林様も戦で見ればわかりますよ。それほど稲威は凄いです」
「へえ、なら稲威」
夏侯淵の俺に対する評価を聞いた曹操が、ニヤリと笑ったような気がした。
これは、絶対誰かと戦わせる気だ! そうに違いない。これは逃げるしかない。どうすればいいんだ……
『そんな時は素数を数えればいいのよ!』
(そんなもんとっくの前に忘れたわ!)
『ならあれよ、長旅で疲れたとかいえばいいんじゃない?』
(そ れ だ !)
「悪いが長旅で疲れているんだ、できればまたの機会にしてくれないか?」
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