第二幕その六
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た。
「何か」
二人は彼女に応えた。
「アンドレア=シェニエさんですね。覚えておられますか」
「はい」
シェニエは応えた。
「お久し振りです。まさかこの様なところでお会いできるとは思いませんでした」
「確かに」
シェニエはここで人生とは皮肉なものだと思った。しかしそれも顔には出さない。
「あの時の宴以来ですね」
「はい」
思えばあの時からもう五年の月日が流れている。時の経つのは早く、そして残酷なものであった。
「今では本当に懐かしい日々です」
「・・・・・・・・・」
シェニエはそれについては何も言わなかった。言っても彼女を傷つけるだけだとわかっていたからだ。
「ところで貴方にお会いしたいという方がおられるのですが」
「誰ですか」
用心はしていた。ジャコバン派の者ならば彼にも考えがあった。
「ご存知だと思いますが」
「む・・・・・・」
手紙のことだと咄嗟に理解した。
「よろしいでしょうか」
「はい」
密偵はその様子を橋の下で聞いていた。
「かかるか」
彼は耳を澄ませ話を聞いている。
「シェニエ」
ここでルーシェが出て来た。
「気持ちはわかるが」
彼はすぐにそこに危険を嗅ぎ取っていた。
「いや」
だがシェニエはそれに対し首を横に振った。彼には自分の考えがあった。
「私は会いたい、その人に」
「馬鹿な、正気か」
「正気でなかったらこんなことを言うと思うか」
「それは」
ルーシェもそれはわかっていた。シェニエは決して冗談や一時の狂気でその様なことを言う男ではない。
「会いたい、そしてその女の人と話がしてみたい」
「そうか」
ルーシェもそれを聞いて納得した。
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