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アンドレア=シェニエ
第二幕その四
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つかったら大変だぞ」
「その時はその場で立ち向かうさ。そして堂々と言ってやる。私の主張が間違ってはいないと。そう」
 彼はここで顔を上げた。
「彼等が正しければ私を殺す理由はない。私を疎ましく思い排除しようとするのは彼等の心にやましいことがあるからだ」
「そうか、そこまで覚悟があるのなら」
 ルーシェも腹をくくった。
「僕も付き合おう。こうなったら乗りかかった船だ」
「有り難う」
 シェニエは友に対し礼を述べた。
「いいさ。僕も奴等にとっては邪魔な存在だしね。どうせなら最後まで見てやるさ」
 そして二人は橋の近くの森の陰に入った。それを遠くから見る影もいた。
「万歳!フランス万歳!」
 群集達の熱狂的な声がする。向こうから質素な身なりの一団がやって来る。
 質素といっても群集達と比べればかなりの差がある。それはかっての貴族達と比べてかなり質素だという意味だ。見れば青い上着に白いシャツに赤いタイ。黒いズボンと同じ色のブーツを履いている。所謂サン=キュロットだ。
 そして多くの者は顎鬚を生やしている。髪は前後で短く切っている。化粧もせず当然カツラも付け毛もしていない。
 これが彼等の服装であった。ジャコバン派はそれまでの貴族的な風俗を徹底的に排除していたのだ。
 彼等は歩いている。何故なら彼等も民衆と同じだからだ。
「歩いているな」
「ああ」
 ルーシェとシェニエはそれを見ながら囁き合っていた。
「ジャコバンの連中が質素で贅沢を嫌っているというのは本当らしいな」
「そうらしいな。彼等に腐敗はない。だが」
「だが!?」
 ルーシェはシェニエの言葉に問うた。
「だからといって彼等が正しいかというとそうではない。貴族達の贅沢とはまた違った意味での悪だ」
「悪か、彼等が」
「そうだ。それはすぐにわかる。いや」
 シェニエはここで言葉を変えた。
「私も君も既にわかっている筈だ」
「確かに」
 ルーシェも愚かな男ではない。学生時代より啓蒙思想に親しんできた。そして革命の一部始終をその目で見てきているのだ。
 だからこそ今橋の上にやって来た彼等の正体がわかっていた。彼等は自分達が言う様な存在では決してないのである。
「神と司祭達だ。姿形を変えた」
 シェニエが言った。
「確かに」
 ルーシェもそれに頷いた。見れば一団は中央にいる男を取り囲んでいた。
「万歳!ロベスピエール万歳!」
 群集は彼の姿を認めるとさらに声を大きくさせた。そこには白い髪に青い目をした男がいた。髭はない。背はやや小柄だ。見たところ政治家というより学者の様な顔をしている。鼻は高く顔は小さい。
「何かあまり悪辣な顔立ちではないな」
「確かにな。その生活は生真面目なものだと聞いている」
 シェニエの言葉は真実であった。ロベスピエール
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