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アンドレア=シェニエ
第二幕その三
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かい!?私が言うように」
「うん。私をこのパリに引き留めている運命、それは恋なんだ」
 シェニエは立ち上がった。そしてルーシェに対して言った。
「私は今まで恋を感じたことはあっても恋をしたことはなかった。これは運命だ。巡り合わなければ永遠にやっては来ないものなんだ」
「それは僕も否定しないが」
「そうだろう、私のこの運命に今一人の女性がやって来ようとしている。彼女はその恋と共に私の前を訪れるだろう」
 シェニエは言葉を続けた。
「あの美しく、神聖な女が。私は彼女を待っていたんだ。その声が私の心を捉えるのを」
「そうか、それが君の言う運命なのか」
「そうなんだ、その人は私に手紙を与えてくれる。ある時は優しく、またある時は厳しい言葉で。私はその人の愛に震えているんだ。それは一人の若い女性だ」
「よくそれがわかったな」
「私の直感だ。そしてその直感はそれが正しいことを教えてくれている」
 それも全て恋の為せる業であろうか。
「私は信じる。そしてその為に全てを捧げよう」
「そうか。そして君は何故ここに留まるのだい!?知ってはいるだろうがここは色々と人目がある」
「その恋がここにやって来るとしたら?」
 シェニエは言った。
「まさか」
「これを見てくれ」
 シェニエはそう言うと今度は彼が懐から何かを取り出した。それは一通の手紙であった。
「これがその女性の手紙なのかい?」
「そうだ、読んでくれ」
「わかった」
 ルーシェは頷くとその手紙を受け取った。そして読みはじめた。
「ここで会うのかい?」
「うん」
 シェニエは頷いた。
「ここにその人がやって来るんだ、私に会う為に」
「そうか。だが気をつけるんだ」
 ルーシェは厳しい顔でシェニエに対して言った。
「僕はこの手紙に危険なものを感じる」
「危険なもの!?」
 シェニエは友の言葉に顔を顰めさせた。
「そうだ、確かにこの筆跡は女性のものだ」
 ルーシェはシェニエにその手紙の文字を見せながら言った。
「そして紙からは香りが漂う。薔薇の香りだ」
 それはその手紙の持ち主が高貴な生まれであるか裕福な育ちであることを示していた。
「だがその裏いは革命の火薬の匂いがする」
「革命の!?」
「そうだ、革命のだ。僕はここに罠があると見るね」
「まさか」
 シェニエはそれを否定した。
「いや、よく見てくれ。そして感じてくれ」
 ルーシェはまだシェニエに言った。

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