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アンドレア=シェニエ
第二幕その二
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こにはいないか。少し遅かったかもな」
 残念がったがそれはほんの一瞬であった。彼はシェニエに視線を戻した。
「見ていろ、絶対に尻尾を掴んでやる」
 彼は密偵であった。ジャコバン派はこうした者達をパリに放って革命の敵とみなし得る者達を監視し探し出していたのだ。これが平等と自由を謳った革命の実態であった。
 シェニエは彼に気付いているのかいないのか。ただベンチに座っているだけであった。誰かを待っているのであろうか。密偵がそう思った時であった。
「む!?」
 誰かがシェニエに近付いてきた。
「あれは」
 見れば若い男である。品のいい顔立ちをした長身の持ち主である。地味なコートに身を包んでいる。
「シェニエ」 
 彼はシェニエを認めるとその側へ来た。
「やあ」
 彼はそれを聞くと顔を上げた。
「ルーシェ、久し振りだね」
「挨拶はいいよ」
 だが彼はそれに対し首を横に振った。
「今はそんな時じゃない」
 ルーシェはそう言うとシェニエに顔を戻した。
「今の君の立場を考えるとね」
 彼はシェニエの友人だった。今はこの街に密かに潜伏していたのだ。
「あれはルーシェか?また大物が来たな」
 密偵はルーシェの姿を認めて呟いた。彼もまたジャコバン派に目をつけられていたのだ。

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