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アンドレア=シェニエ
第二幕その二
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れている場所である。
 しかし実際は違っていた。そこでは血生臭い権力闘争が行なわれ敗者は断頭台へ送られた。貴族達の処刑が決められ流血の匂いが充満していたのである。
「私は少なくとも人々の血を見て喜ぶようなことはしなかった。今でも」
 彼女はそう言うとかっての仲間達に顔を向けた。
「行きましょう、皆。こんなところにいても何にもならないわ。貴方達だって嘲笑を受けたくはないでしょう?」
「・・・・・・ああ」
「・・・・・・ええ」
 彼等はそれを聞いて立ち上がった。
「私今あるお金持ちの愛人になっているの。それでお金を稼いでいるわ」
 娼婦からそうした者に囲われるのはよくある話である。かってはローマ法皇もそうしていた。
「そのお金で少しばかりの宴を開きましょう。皆でお金を出し合って」
「そうだな」
 彼等はその言葉に頷いた。
「あの人達はあの宮殿で、戦場で血を楽しんでいるわ。けれどね」
 ベルシは宮殿を見たあと仲間達に顔を戻した。
「私達は葡萄のお酒で楽しみましょう。赤いあのお酒で」
「そうだな、今日は久々に宴を楽しもう」
「ダンスをしながら」
 彼等は次第に元気を取り戻していた。
「そうと決まれば話は早いわ。じゃあこんなところから早く立ち去りましょう」
「ああ」
 こうして彼等はその場をあとにした。
 彼等は幸いであった。その後ろを一台の運搬車が進んでいた。
「殺せ!殺せ!」
 その車に罵声が浴びせられている。だが彼等はそれを聞くことはなかった。既に橋のあたりから姿を消していた。
「正義の裁きを受けろ!とっとと死んじまえ!」
 また処刑される貴族達であった。彼等は黙って民衆の罵声を受けていた。
 中にはジロンド派やジャコバン派もいる。彼等もまた宮殿の血生臭い戦いに敗れた者達であった。
「君達もいずれわかる」
 その中の一人がポツリと呟いた。
「だがその時には」
 誰にも聞こえない声だった。だが彼は言わずにはおれなかった。
「君達はこの世には生きてはいないだろう」
 そう言うと口を開くのを止めた。車は馬に引かれその場を去っていく。
「また断頭台がその喉を潤すのか」
 それを見ていた一人の男が呟いた。
「あれだけの血を飲み干しているというのに」
 彼はベンチに座っていた。そしてそれを見ていた。
 そこへ誰かがやって来た。
「濃い茶色の服とコートを着て黒のズボンを着た銀色の髪の男か」
 何やらこそこそとした様子である。
「あいつか」
 彼はベンチに座るその男を認めると懐から何かを取り出した。見れば人相書きである。
「間違いないな、あいつだ」
 彼はそう呟くと物陰へ隠れた。
「アンドレア=シェニエ。要注意人物だな」
 そして物陰に隠れながら辺りを見回した。
「見たところベルシはこ
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