第二幕その二
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第二幕その二
「昼は思うがままに政治をする」
彼は言う。
「豪奢なテーブルの上で事務や計の執行を行い裁判もする」
「全てを決められるのですね」
「そうだ、わしが全て決める」
誇らしげに言う。
「何もかもな。そして夜は」
「夜は?」
「毎日がこうだ」
今の宴の場を見回してまた一杯飲んだ。そこに取り巻きがまた一杯注ぎ込む。
「酒に御馳走に」
「それに女ですな」
「そうだ。特に頬の紅い黄金色の神の女だ」
それが彼の好みであった。
「若い娘の中でも。美しい娘は全てわしのものだ」
「素晴らしい」
「やはりそうでなくては」
「男の愉しみとは何ぞや」
彼は取り巻き達に問う。彼等はうやうやしい様子でそこにいるがやはりそれは下卑た態度であった。ウラジーミルの粗野な物腰と同じように。
「存分に楽しむことだな」
「それはやはりその三つで」
「その通りだ。特に酒だ」
また飲んだ。そこにまた注がれるが彼は何処までも飲むのであった。
「これがなくてはな。何も意味がない」
「ルーシーの男は酒がなくては生きてはいけない」
「酒は全ての父であり母である」
「そうだ。全ては酒からはじまる」
こうした意味で彼はルーシーの男であったそれを自覚しながらもまた飲むのであった。
「これからな」
「ところで公爵」
「何だ」
ここで取り巻きの一人の言葉に顔を向けるのだった。
「お耳に入れたいことが」
「ポーロヴィッツのことか」
彼は最初そう察しをつけた。これはルーシーの領主なら当然のことであった。
「それならば西からポーランドやマジャールの者達を引っ張って来い」
「いえ、そちらではありません」
だがその取り巻きはそれを否定するのであった。
「そうではなく」
「では何だ?」
「妹君です」
彼はこう述べた。
「ヤロスラーヴナのことだ」
「そうです。今の公爵に御不満のようですが」
「やれやれだな」
彼は妹の名を聞いてその真っ赤な顔に苦笑いを浮かべるのだった。やはり酒は止めはしない。
「あいつの真面目さも。筋金入りだ」
「今日こちらに来られるようですが」
「では通せ」
何でもないといった様子で応えるのだった。
「来れば。いいな」
「宜しいのですか」
「構わん」
一向に動じた様子はない。それは酒のせいではなかった。
「通せ、よいな」
「わかりました。それでは」
「酒はまだあるか」
彼はここで周りの者達に問うた。
「ないのなら蜜酒を出せ」
「はい」
「そしてワインもだ。いいな」
「何処までも飲まれるのですね」
「では聞こう」
彼はここで周りの者達に問うのだった。
「酒がなくて何の人生か」
彼は問う。
「そんなものは何でもない。酒のない人生なぞな
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