GGO編
episode2 音無き決戦2
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クアアァン、という耳障りな高音と共に、俺のヘルメットが砕けて吹き飛んだ。
俺の唯一と言っていい防具だが、この至近距離での大口径銃の一撃には紙同然でしかない。
案の定なんの効果もなく、体が凄まじい衝撃に上体が仰け反って足が止まろうとする……が、それを根性で堪えて走り続ける。現実であれば首がへし折れそうな衝撃に平衡感覚を掻き乱されながらも、駆ける足は止めはしない。
なぜなら。
(ッ、まだ、生きてるっ!)
勿論あんな大口径銃の一発をまともに頭に喰らえば、俺なんかでは(というかどんな耐久一極のプレイヤーであろうとも)即死だ。だから俺が今こうしてまだ生きている……HPゲージを保っているということは、さっきの一発は、直撃では無かったということ。
(……インパクトダメージだけだ!)
衝撃は、弾丸の追加効果であるインパクトダメージ。それは、普通の銃弾よりも強力な……たとえば大口径の狙撃銃で至近距離で撃たれたときのような……衝撃を受けた際に、掠っただけでも巨大な範囲にダメージを及ぼすというGGOのシステム的な追加効果。
(躱せたっ!)
俺のヘルメットを掠めた弾丸は、直撃を避けられてもなおその衝撃だけでヘルメットを砕いたが、それでも俺のHPを削りきるには至らなかった。視界の端に映る俺のHPゲージには僅かに……しかし確かに、赤い光が残っている。
まだ、戦える。
「うおおおおおおおっ!!!」
絶叫しながら、むき出しになった両の目でザザの居るであろうその空間を睨みつける。
視界に踊る、スモークされたバイザーが月明かりに煌めく。
加速する世界の中でその内の一つを手に取り、力任せに前方に投げつける。
「―――ッ!?」
銃弾に比べれば微々たる威力だろう。
だがどんなに威力が低くても、衝撃さえ加えられれば光学迷彩は破ることができる。
プラスチック片は空間をさざ波のように泡立たせ、ザザの体が一瞬だけ露わになる。
その一瞬の間に一気に低く跳躍して、零距離……俺の間合いへと踏み込む。
(逃がすかよ……!)
飛び退ろうとする相手を、にらみつける。
その目が、懐に入った俺を睥睨する奴の赤い目の視線と交錯した。
同時に、体を捻じ切らんばかりに引き絞って、長く伸びた右腕の先、五本の指を鋭く揃える。
それは、今は失われたかつての世界で《エンブレイサー》と呼ばれた、俺の十八番。
(この一撃…っ!)
この一撃の後、俺は死銃に撃たれて死ぬだろう。
だからこの一撃が、最初で最後の一撃。
死銃のHPを削りきるには到底足りないだろう、しかし俺の出来る、最後の一撃。
この一撃で、狙うのは。
「るあああああッ
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