GGO編
episode2 赤い目と、空色の夢
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たとえ見慣れぬ光剣を使っていようとも見間違いようも無いあの太刀筋の『勇者』であり、この目の前の男に負けるとは微塵も思っていなかった。しかしこいつがあんな隠し装備を持っていれば、その一撃は弾かれかねない。そしてこれだけの大口径のライフル、その一撃の隙は文字通り致命的だろう。
「っく、くおっ!!?」
必死に走る俺の体を、飛来したライフル弾が掠めた。そのたった一撃で、俺のHPが一割以上減少する。この距離で……いや、たとえある程度離れていようと、直撃を受ければ一発で御陀仏だろう。必死に走り、先読みされなように不規則な軌道を描いて逃走する。
今は逃げるしか、出来ない。
(……っっ!)
唇を、噛み締める。完全に、読み負けた。
既に俺の武器は全て破壊されてしまっている。この世界に存在する《体術》には、一応《|軍隊格闘術(アーミー・コンバティブ)》というものが存在するのだが、それはソードスキルはおろか俺の得意とする手刀、足刀などの技は殆どなく、絞め技や固め技を主とするスキルなのだ。
そもそもこの世界の防具はファンタジーな鎧とは違って銃火器を防ぐための強固なアーマーなのだから、当然その硬さの前には拳での打撃なんぞの威力はまともに通りはしない。それこそ光剣のような特殊武器でもない限り、接近戦に持ち込んだとしても、とても手数で押し切ることは出来ない。
無手の俺では、どうにもならない。
(……ちくしょう……っ)
ぼやける視界のなかで走り、必死に距離を取る。
俺は、悔しいくらいに無力だった。
◆
「はあっ! はあっ! はあっ!」
切れるはずのない息を荒げて、俺は膝をついた。
必死に逃げて辿り着いたのは、巨大なサボテンの影。幅広な遮蔽物は全方位を覆うわけではないが、不可視の固定砲台となって俺を打ち続けていた死銃相手に少しは時間を稼いでくれそうだった。少なくとも、俺の息が整うくらいの間は持つか。
いや。
(……死ぬ覚悟が、出来るまでの間、かもな……)
逃げ惑う中で、俺の心は半ば以上折れてしまっていた。
圧倒的な戦力差に、濃厚な敗北の気配に、完全に呑まれていた。
(ザマねえな……死ぬのか、俺……)
整わない息のまま、乾いた笑い声を洩らす。
あの男の銃が、本当に相手を殺す力があるのなら、俺がここで殺される可能性は十分ある。
赤目のザザ。かの伝説のゲーム、『ソードアート・オンライン』に参加したSAO生還者の一人にして、最悪の殺人者ギルド、『笑う棺桶』の幹部だった男。
そして何より、俺の最愛の人を殺した男の一人。
(ザザ……)
あの夏の日の深夜の
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