GGO編
episode2 死の銃と布良星4
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この銃で、あいつをハチの巣にしてやりたい、いや、もっともっと、それこそ思いつく限りの残酷な手段で消してやりたいという、ひりつく様な渇望。俺の体に流れる、人を殺した人間の遺伝子が求めるかのように、体が熱くその渇きを血で潤そうとする。
抑制の振り切れた衝動が、俺の感覚を狂わす。
その感情はマイナスなものではない……寧ろ歓喜に近かった。
宿敵を、再び殺す機会。
あの時殺し損ねた首を獲る機会。
「おオおぉオオおおおぉおっ!!!」
意味無く絶叫しながらの、全力疾走。
その先で、ライフルの発射炎が瞬くが、もう既に俺にはその弾道予測線が見えている。難なくかわして更に前進、一気に距離を詰めていく。もう隠れる意味は無いと悟ったのか、ぼろマントが実体化してその巨大なスナイパーライフルを構えた小柄な体が露わになる。
「おおおおっ!!!」
その姿が、俺の殺意の炎を更に滾らせる。
貴様に人を殺す力があるなら、俺に無いはずはない。
貴様が意志の力で人を殺せるというのなら、俺にそれが出来ないはずはない。
貴様らを殺したいという想いを、俺はあの日以来、ずっと心の底で抱いてきた。
今なら分かる。
あの夏の日の夜、貴様らを皆殺しにしてやれなかったことを、俺はずっと悔いてきたのだ。
「あ゛あ゛ああーーーーっ!!!」
魂の渇きのままの絶叫。
やけにスローになった世界で、再びのスナイパーライフルの一撃。額の中央を射抜く超速の弾丸を、首だけ捻って回避して、勢いを緩めずに疾走。既にその距離は百メートルをきって、もう光線防御フィールドの効果限界はすぐそこだ。見えるはずのない領域が、まるで魔法の様にはっきりと見える。右手が、その間合いに入るのが待ちきれないとばかりに赤い銃を小刻みに揺れるほどの力で握り締める。
減速した世界での、交錯。
構えられた一瞬で、まるで心臓が停止したように固まる着弾予測円。
引き絞るトリガー。発射される三連の鮮やかな閃光。
その全てが奴の体へと過たず飛来し、
「っ!!?」
三本とも、表面で滑る様にその軌道を歪められた。
思いつきすらしなかった想定外の自体に、俺の猛る思考が、体が、一瞬だけ止まる。
―――いい、殺気だ。……が、俺には、通じない。
ほんの数十メートルの距離での、決定的な隙。
次の瞬間、まるでそうなることが分かっていた様な落ち着きで構えられた奴のライフル。
その銃口が、無音のまま不吉なマズルフラッシュを光らせ。
俺の右手の《カノープス》が、爆音とともに砕けて吹き飛んだ。
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