GGO編
episode2 死の銃と布良星4
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ばされ、その中央、ほんの僅かに砂漠の砂が不自然に動くのが見える。サボテンの一本の、その根元。距離は、八百メートル。
(……っ、遠いっ……)
唇を噛む。カノープスの有効射程は確かにハンドガン、それもなんの習熟もなく使える武器としては異例ともいえるほどに長いが、それでもこの距離ではまず当てるのは不可能。それによしんば当てられたとしても、光学防御フィールドは到底貫けない。
(……あの野郎、予想以上に、強い)
そして同時に、この距離が相手の力量を表している。あの一瞬の……隙とも思えないほどの僅かの停止を読んでの狙撃を、この距離で成功させる。贔屓目抜きでトップスコードロンの一角と言える『雑技団』のメイン狙撃手と比べても、相手は明らかに互角以上の腕前だ。
(いける、……!)
相手の腕は、紛れもない一級品。だが、狙撃手の最大の利点である「弾道予測線無しの一撃」は、武器こそ奪われたが不発に終わった。まだ左手に取り出していた閃光弾一つは残っているし、何より右手の切り札、《カノープス》は無事だ。
(……やれる)
しっかりとその銃を握り締める。
体は、ますます加速していく。
まるで。
そう、まるで。
(……あの頃、か)
かつて本当の命を賭けて戦った、あの世界の様に。
かつて命を奪うために争った、あの夏の日さながらに。
体は、燃えるように加熱していく。
その一方で、心のどこかが冷たく醒めていく。
懐かしの……あまり思い出したくなかった、あのころの感覚。
ああ、これじゃあまるで。
(……死ぬ気で殺し合った、あの日みたいだ)
冷えた思考で、ふとそう思った。
◆
脳の血流がまるで逆流するかのように、全身がドクリと脈打った。
死銃を名乗るあの男の持つ、人を殺す『本物』の力。
しかし同時に、あの世界では誰しもが否応なく与えられた、その力。
覚めたのは、その力に再び触れたせいか。或いはあたかもあの世界での幾度とない死闘と同様に、極限まで加速した体と心のせいか。本当の理由は誰にも、俺自身にも分かりはしないが、とにかく俺は、『覚めて』しまった。
目覚めたのは、死への思慕。
揺り起きたのは、『彼女』への想い。
還り来るは、『奴ら』への憎しみ。
二つの感情に視界が眩む。同時にあの日の暗闇が、砕けるデータの破砕片が、もう戻らない笑顔がフラッシュバックして心を掻き混ぜ、目の前の影と相まってどろどろとした何かを……俺がかつてあの世界で持ちえなかった思いを生む。
生まれたその名を、俺は知っている。
―――『殺人衝動』だ。
目の前のあの男を、殺したいという想い。俺の手にある
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