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イーゴリ公
第一幕その一
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いた。切れ長で澄んでおりその黒は夜の黒だった。それが白い肌と見事な対比を見せていた。それと共に美貌もまた際立たせていたのだった。ルーシーのものではない、東の美貌であった。
「私の愛する方は来られるかしら」
 彼女は娘達の言葉を聞きながら思うのだった。
「今ここに。来られるのかしら。いえ、若しかして」
 ここでふと危惧を覚えた。
「私がここでお待ちしていることを知らないのかしら。伝え忘れて」
 それを思うと胸が張り裂けそうになる。夜の闇の中でその顔を暗くさせた。
「それでも。私は」
 だが希望を思い出し。呟くのだった。
「貴方を待つわ。もう夜だから」
 そう、夜だった。娘達が楽しみにしている夜だった。
「御会いできる時間だから。だからここに」
「甘美な時が来るわ」
 娘達も言う。
「私達の待っていた時間が」
「そう、それはもうすぐ」
 黒い服の娘も言う。
「甘美な時がはじまるわ」
「コンチャコーヴァ様」
 ここで娘達はその黒い服の娘の名を呼んだ。彼女はポーロヴェッツのハーンの娘、言うならば彼等の王女なのである。高貴な女なのだ。

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