GGO編
interlude 顔知らぬ人へ
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(俺自身はあったことも無いが)の後妻に当たる女性の子。
なの、だが。
(この人も、紛れも無く『四神守』ってわけだ……)
深くため息をつく。これは、捕まった自分の油断になるのだろうか。
とりあえず自力での脱出を諦めて、説得を試みる。
……というか。
「離してください、呼白さん。呼ばれてきました、朱春の息子のシエルです」
「……シエル……ああ……君がそうか……玄路兄さんに聞いて……呼んだな……」
俺は今回は招かれた身であって、こんな仕打ちを受ける言われはさらさらないのだ。
呼白さんもそれをすぐに理解したらしく、固めていた腕を解く。振う腕がそこまで痛まないことを考えると、やはり腕の筋力で押さえつけていたのではなく技で固定していたのだろう。……そこまでの技術を磨いているということか。確か聞いた話では、この人は大学教授、バリバリのデスクワーク派だということだったのだが。
「……すまないね……ココちゃんは……何をしているのかな……」
「ああ、仔虎さんならさっき話して、」
「およびですかー、っきゃー!?」
特徴的な、霧の向こうから聞こえる様な声での問いかけ。間近で聞く俺にこそ聞こえるものの、五メートルも離れれば常人ではとても聞きとれないだろうその呟きはしかし、俺の入ってきたドアからの返答を促した。バタンと勢いよく音を立てて開かれた扉が、幾つかの本の山をなぎ倒す。
「ごごごごめんなさいー!? すぐに直しますですー!?」
「ああ……それはいいよ……それよりも、お客さんだ……飲み物を頼む……」
「はははいですー! すぐお持ちしますですー!」
入ってきて盛大に埃を巻き上げた少女……失礼、小柄な女性が、元気よく帰っていく。呼白さん付きの唯一の『神月』である人物……仔虎さんだ。玄路伯父さんや蒼夜伯母さんが十人近い神月をその手足として従えているのに対して、この人や母さんは一人ずつしか付き人を持っていない。ということは、こんななりでも実はスゴイ人なのか。
とか考えていると、
「……ああ……彼女は……耳と目がよくてね……僕の声でも届くし……資料探しも上手い……家事は……あまり出来ないけどね……僕にはちょうどいい子なんだよ……」
「……なるほど」
その答えは呼白さんからもたらされた。と同時に、「きゃー、コーヒー!?」の悲鳴。成程。
二人で苦笑して、ゆっくりと椅子を……引こうとして、本の山のせいで引けなかった。どうしたものかと戸惑っていると、呼白さんが無感動に容赦なく椅子を引きやがった。押されて本の山の一角がガラガラと崩れるがそれはどうでもいいらしく、呼白さんは無表情に机に向いていた自分用の椅子をくるりと回してゆっくりと座る。
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