GGO編
interlude 顔知らぬ人へ
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これは、何気ない会話の一場面を切り取った話だ。だからいつのことだったか忘れてしまったものも、そもそもどんなシチュエーションで生じた会話だったのかすら覚えていないものもある。そんな話をするのは、これが必要な話だからに他ならない。
そう、必要なのだ。
あの銃と硝煙の世界である、GGO。
その中で、最強のプレイヤーを決める戦いである、BoB。
そこで生じた、あの事件と。
顔も知らない『とある人物』について、語る為に。
◆
「失礼します……っと、うわぁ……」
ゆっくりと扉を開けた俺は、高々と積み上げられた本の森に、思わず溜め息をついた。場所が有名大学の広い研究室な上に、母さんや玄路伯父さんから彼の人となりを聞いていたからある程度は予想はしていたものの、図書館かと言いたくなる程のこの光景は流石に予想の上だ。
「呼白さん、いますか? シエルです、お話を聞きに来ましたよ」
返事は無い。
「呼白さん?」
もう一度呼ぶもののなおも無い返事に、しょうがなく俺はそのまま本の森へと踏み込んだ。本棚に入りきれないのか床に直接積み上げられた無数の本の山を崩さないように、慎重に足の置き場を選びながらだが。
それにしても、凄まじい本の量だった。このネットが盛んになったご時世、ここまで紙の書物を見る機会はあまり多くない。そんな必要があるのは、情報の氾濫したネットでは正確さに欠ける様な、各自の専門分野を追求する必要のある者だけ。
まあ、今呼びかけている人は、まさにそんな必要のある人物なのだが。
「……なんだ、ちゃんといるんじゃないですか、返事してくださいよ」
山の山のそのまた向こうの机に突っ伏した、よれよれのスーツ姿の男の姿を認めて、呆れて声をかける。いくら呼んでもない反応に一つ溜め息をついて、ゆっくりとその本の山を掻き分けて進みその背中を叩いて、
「……ッ!!?」
「……舐めないでほしいな……これでも僕も『四神守』。護身術くらいは心得ているよ……」
その手が滑らかに固められて、机に叩きつけられた。
完全な無反応から一転した鋭い動作に反応しきれず、腕を取られてそのまま固定、ケーサツにでも抑えられるように身動きが取れなくなる。床に負けず劣らずに積み上げられていた本や辞書、専門書がその衝撃でガラガラと音を立てて崩れていく。
(……っ、甘く、見ていた、ってか……)
何とか自分を締め上げるその型から抜けようと必死に首をひねりながら、内心で舌を巻いていた。
四神守……つまりは俺の母さんの兄弟三人のうちの、最後の一人、呼白さん。唯一母さんより若い(確か三十代の半ばだったはず)叔父であり、母さんを生んですぐに無くなった祖母
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