プロローグその三
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と公爵の人望に対する劣等感がそこに見えていた。
「ルーシーを。守ってみせましょう」
「では。兄として頼みたい」
公爵はその彼を今兄と呼んだ。
「妻を頼む」
「わかり申した。では妹よ」
優しげだがそれでも粗野なのは隠せなかった。ヤロスラーヴナもそれを感じたのかその整った顔を微かに顰めさせるのであった。
「行くぞ」
「行かれるのですね」
「御前の言葉は受け取った」
それは認める。しかしそれでも彼は行かなければいかなかったのだ。
「今司教も来られた」
正教の司教である。その独特のみらびやかな法衣が彼が正教の司教であることを皆に教えていた。彼は静かに公爵達の前に来たのだった。
「公爵よ」
「はい」
公爵は司教の言葉に応えた。
「それで御願いします」
「ええ。それでは」
司教は静かに公爵の前に来た。そうして司教は自分の前に跪いた彼等に対して祝福を与えるのであった。
「我等に神の御加護を」
「我等に神の御加護を」
兵士達も民衆達も司教の言葉を復唱する。
「神は我々に勝利を下さる」
「そう、勝利を」
「異教徒達に対する勝利を」
彼等にとって遊牧民達はただの異教徒ではない。恐るべき侵略者なのであった。だからこそ彼等は遊牧民達を恐れているのであった。
「では行くぞ」
公爵が軍に告げる。
「戦場に」
「勝利に」
今ルーシーの軍勢が出陣した。民衆は彼等を喚声で送り出す。だがヤロスラーヴナだけはその顔が暗かった。不吉なものを隠せないでいたのだった。
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