GGO編
prologue 賑やかなる安らぎの日々
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「んあ゛ーー終わんねーー……」
迫る〆切に追われながら、一向に目途の立たない取材記事に俺は深々と溜め息をついた。小柄な音楽妖精の体で大きく伸びをして、その拍子に揺り椅子の背もたれが派手に軋む。
今、自分が取り組んでいるのは、遥か昔にやっていたバイトの記事書きと違ってれっきとした仕事としての執筆だ。読者投稿ではない正規の記事となるとやはり下手はうてないというプレッシャーもあり、結果として執筆は遅々として進んでいなかった。
(うぁぁー……)
VRワールドではあるはずのない目の疲れを癒す為に窓の外に目をやると、既に空には仮想の日が高く上り、その上一角を覆うように浮遊する巨大な鉄の城が往くのが見えた。ああ、そうか、今日はあの伝説の城がこのプーカ領の上空に来る日だったか。
と、思った瞬間。
「シードーくーんっ! 行こうよ行こうよ、アインクラッドっ! 今日逃すとまたしばらく行けないよっ! 今日こそは行くべきだよっ!」
元気のいい声が響いた。……俺の、頭の上から。
続いて、ペチペチと効果音がしそうな軽い衝撃が俺の燈赤色の髪を振わせる。
「……期限前なんだよ、勘弁してくれ全く……っと、」
「うわ、と、ととっ、でもでもっ、シドくん手止まってるよっ? こういう時は気分転換だよっ!」
なおも続く衝撃から逃れようと頭を振る。
それにあわてたような声を上げ、小さな人型の妖精がふわりと俺の頭の上から飛び立った。
空色のワンピースに、同色の髪を三つ編みにした手のひらに乗るくらいの大きさの少女。尖った耳と透き通った羽はこのゲームにおけるNPCの一種、ナビゲーションピクシーの特長だ。これもまた空色の羽を背中ではばたかせて、なんとか作業に戻ろうとする俺の目の前をひらひらと飛んで抗議の意思を示す。言わずもがな、あの世間を騒がせた「ALO事件」の結果に俺が得たささやかな報酬……かの天才、茅場晶彦によって作り上げられたメンタルヘルスプログラムであり、かつての俺の最愛の人……みたいな、元気印の喧し娘……チビソラだ。
ああ、俺はコイツのことをチビソラと呼んでいた。基本的にナビゲーションピクシーの姿(でかい人間型でうろうろしてると邪魔だからだ)でいさせているソラモドキなので、チビソラ。なかなかに安易なネーミングセンスだと自分でも呆れるが。
閑話休題。
「気分転換してる場合じゃねーんだよ、あと五時間だぞ……」
「でも、ぐだぐだと五時間書くより集中して三時間の方がきっといいものが書けるよっ!」
弱弱しく抗議する俺。まあ、俺の意見がはりきりまくりのチビソラに受け入れられないだろうことは、言うまでもなく良く分かっている。それでもまあ一応ポーズとして拒絶をしておくの
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