第八章 望郷の小夜曲
第八話 月下の口づけ
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か」
「じゃあ。今日のところはここで休みましょう。ほらほらミス・ツェルプストーもミス・ラヴィエールも汚れますよ。テントを張りますからそこどいて下さい」
「う〜……わた、しは、しろうに、あう、の、よ」
「まだ、いける……いける、わ」
「はいはい大丈夫ですよ。きっとシロウさんに会えますから。今日のところは寝ましょうね」
地面に突っ伏し寝言を呟き始めるキュルケとルイズに「はいはい」と頷きながら、シエスタは手早くテントを張り始めた。シエスタはテントを張りながら、チラリと横に視線を向ける
と、そこには鬱蒼と生い茂る枝葉の向こうに見える月を、目を細め見上げるロングビルの姿があった。
やっぱり変ね。
この森の中に入ってから、明らかにロングビルの様子が変であった。
惚けたように、ぼうっと月を見上げるロングビルを横目に、シエスタは昨日の夜のことを思い出した。
昨夜、アルヴィーの人形劇からテントに帰ると、丁度そこにロングビルが戻ってきた。「遅いわよ」とルイズたちが文句を言うと、ロングビルは笑いながら謝り、とある情報を提示し
た。
その情報とは、「士郎と思われる男がウエストウッド村にいる」と言うものであった。
……………………。
……その後が大変だったなと、その時のことを思い出したシエスタのテントを張る手が鈍りだした。
ウエストウッド村に士郎がいる。
それを聞いたルイズとキュルケの動きは迅速であった。取るものも取らず、子鹿のように震える身体でウエストウッド村に向かおうと走り出そうとしたのだ。
完全に日が沈み、足元さえ覚束無い夜の闇が広がる中を、五十リーグ先の森にある村まで……。
しかも、疲労が頂点を極めた身体で……。
もちろんシエスタも早く士郎と会いたい。少しでも可能性があれば、どんな所にでも行くつもりであった。ルイズたちが動き出さなければ、シエスタが向かおうとしていたかもしれなかったが、自分よりも先に暴走を始めた二人の姿を見たおかげで、冷静になることが出来た。
ウエストウッド村に向かおうとする二人を何とか落ち付かせようとしたシエスタだったが、疲労と興奮で脳内麻薬がドバッと溢れ出しているルイズたちを止めることは難しく。最終的にはロングビルの手によって、強制的に止めてもらうこととなった。具体的には、ゴーレムで二人を一晩羽交い絞めにしたのだ。そのおかげで、一晩中ゴーレムに抱きつかれたまま過ごした二人の疲労は、殆んど回復することなく。結果、一日掛けて五十リーグを走破した姿が、この十代の少女とは思えない倒れ伏した姿であった。
昨日までは、特に変ではなかったんですけど……やっぱりあの時から。
ぐでっと寝転がるルイズたちから顔を逸らしながらシエスタは、顎に指を当て首を傾げる。
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