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イーゴリ公
第三幕その五
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第三幕その五

「本来は死罪だが相手が相手だ。よい」
「畏まりました」
「ではそのように」
 兵士達はまた応えた。ハーンは命令を出し終えた後で満足気な笑みを浮かべた。そうして言うのであった。
「見事な男だ、流石はわしが認めただけはある」
「認められたのですか」
「そうだ」
 将軍の一人の言葉に応える。
「勇者とな。わしが同じ立場であってもそうする」
「左様ですか」
「あの者とは共に馬を並べたかったが。これも運命か」
 彼は言うのだった。決して公爵を罵らない。それどころか褒め称えていた。
 その彼に対して。将兵達は問うてきた。ハーンは鷹揚に彼等に顔を向けた。
「ハーンよ」
「何だ」
「この若者に何もせずともよいのですか」
「先程の御言葉ですが」
「何故そんなことを言うのだ?」
 ハーンは不思議そうに彼等に応えた。
「どうしてそういうふうに」
「この若者は公爵の子」
「鷹の子は鷹です」
「そうであろうな」
 ウラジミールの能力も知っている。ハーンはそれも認めていた。
「立派な若者だ」
「それではその若者が」
「親鷹の後を追うとは思われませんか?後で」
「そうなるよりは」
「今、黄金の矢で」
「その必要はない」
 ハーンは厳かに彼等にそう告げた。
「鷹の子に逃げられたくはないのだな」
「その通りです」
「だからこそここで」
「ならば。一つ考えがある」
 ここで彼は自信に満ちた笑みを浮かべた。そうしてまた言うのだった。
「御考えが?」
「それは一体」
「ウラジミールよ」
 ハーンは優しい声をウラジミールにかけた。ウラジミールも彼に顔を向ける。
「はい」
「御前は今よりわしの息子だ」
「えっ!?」
 彼は突然の言葉に呆然となった。最初言葉の意味がわからなかった。
「それは一体。どういう意味でしょうか」
「そなたは今よりコンチャコーヴァの夫だ」
 ハーンはまたウラジミールに告げたのだった。
「これでわかったな」
「何と・・・・・・」
「お父様」
 これにはウラジミールだけでなくコンチャコーヴァも言葉を失った。
「まことですか、それは」
「お父様、それは」
「わしとてハーンだ」
 彼は今度は二人に告げた。厳かな声で。
「わかったな。だからこそ」
「わかりました」
「それでは」
「これで鷹の子はわし等の元へ繋ぎ止められた」
 ハーンはあらためて将兵達に顔を向けて宣言したのだった。
「これでいいな」
「わかりました。これで」
「鷹の子は我等のもの」
「ではいいか、誇り高き草原の者達よ」
 ハーンはこれまでとはまた違う豪壮な声で皆に告げた。
「いざ、ルーシーへ!」
「ルーシーへ!」
「戦いへ!」
 彼等も口々に叫ぶ。
「偉大なるハーン
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