八話
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ジジイと旅を始めて約一年後。
今俺とジジイは賊の強襲を受けていた。
「やっちまええぇェェ!!」
合図と共に剣を振りかざす賊に、ジジイの大鎚が当たる。当たった賊はそのまま空中へと投げ飛ばされた。
「柏也、ちゃんと後ろにおれよ」
「分かってる、そんな馬鹿な真似はしねえよ」
ちなみに俺はというと、ジジイの後ろで縮こまっていた。理由は単純、ジジイの邪魔になるからだ。
俺自身はそろそろ戦えると思っているのだが、まだ人を殺したことがない者が戦えるほどこの時代は甘くないし、今の強さだとジジイの邪魔にしかならないと分かっているので後ろに下がることにしていた。
「なんだこいつ、強ぇぇ!?」
「怯むな馬鹿! 相手はジジイ一匹だぜ? 負けるわけねぇよ!」
「それはどうじゃろうな?」
「あン?――ッ!?」
余裕綽々と話をする賊共に、ジジイが鉄槌を振り落とす。それだけで、賊はただの壊れた人形になってしまった。
「舐めてかかるな野郎共!! 相手は一人なんだから囲んで潰せ!」
賊の指揮官のような者が命令すると、賊共は一斉にジジイを囲む。
「はっはっは、舐められたもんじゃのう」
ジジイが腰を屈め、大鎚を振り回す。その一瞬の出来事に囲んでいた賊共はまさに不意を突かれたのだろう。勢いよく回る大鎚にぶつかり、賊は弾丸のように周りに吹き飛び他の賊共を倒していく。見ていて気分の良いものではないが、ここは三国時代、俺も人を殺さねばならないのだ。慣れとはいわないが、自分を守るため、この程度の光景で臆することがないようにしないといけない。
「んだよコイツ、化物かよ!?」
「逃げろおおぉぉ!」
「うわああああああああああぁぁ!!」
「助けてくれえええええええぇぇ!!!」
「おかっつぁあああああん!!!!」
各自色々なことを叫びながらジジイから逃げていく。
なるほど、人間離れした技を見れば、どんなに殺しに慣れていようと恐怖を覚えるのは当然か。
「ふう、まあこんなものかの」
いつものようにジジイがこちらに戻ってくる。俺はその光景をゆっくり見ながらジジイめがけて野太刀を振り回した。
瞬間、ジジイがそれを避け、振り回しをしゃがんで避けていた賊を俺が一突き。
これが俺の初めての人殺しとなった。
「――、おお、気づかなんだわ、流石じゃの柏也」
「俺的にはジジイの反射神経に驚いたがな」
「はっはっは、その速さじゃまだまだ先は長いのう」
「うるせえ!」
「まあしかし、人が死ぬのを見て吐いておった頃に比べると随分強くなったの、次からはお主も戦うとよいぞ」
ジジイから許しをもらい、俺はため息と共に愚痴を零した。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ